月の水分子を同定する、量子カスケードを利用したNASAの高出力テラヘルツレーザー

Credits: NASA/Michael Giunto

月で水が発見されたのは記憶に新しい。しかし、既存の技術では、水と自由な水素イオンや水酸基を区別できない状況だ。NASAは、ゴダード宇宙飛行センターの技術を使用すれば水の区別が可能になると説明した。

2022年8月24日のブログ記事によれば、水かどうか区別できる特定周波数に狙って検出する「ヘテロダイン分光計」と呼ばれる装置を使用するようだ。その際、NASAのSmall Business Innovation Research(SBIR)プログラムで試作した、安定的な高出力テラヘルツレーザーが必要になるという。

水のような水素含有化合物は、マイクロ波と赤外線の間に相当するテラヘルツ周波数帯域(毎秒2~10兆サイクル)の光子を放出する。ヘテロダイン分光計は、検出光にレーザー光を混合させるが、既存のレーザー技術では、テラヘルツ波を生成するのに適した材料がなかった。NASAゴダード宇宙飛行センターのBerhanu Bulcha博士率いる研究チームは、量子カスケードレーザーを応用してこの問題を解決した。

量子カスケードレーザーでは、わずか数原子厚の層が層状化した材料を用いており、電子遷移イベントから生成する光子の周波数は、層の厚みで決まる。研究チームは、80~100層の10~15µm未満の厚さの材料を使用し、カスケードのテラヘルツレーザーを作製した。同レーザーは、低い電圧消費で安定した高出力の光を生成できる。Berhanu Bulcha博士は「本レーザーにより、テラヘルツ周波数領域のスペクトル研究分野が開けるようになる」と説明した。

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