「エンジニアリングを極める」ために、自動車整備士からフィールドエンジニアの道へ──メイテックフィルダーズ 中野 良氏

株式会社メイテックフィルダーズは、ものづくりの要となる設計・開発から、試験・評価・解析、生産技術、品質保証、フィールドエンジニアリングの領域に、プロフェッショナルなエンジニアによる派遣サービスを提供している企業だ。中野 良氏はカーディーラーで約10年、自動車整備士として経験を積んだ後、メイテックフィルダーズへ転職し、フィールドエンジニアとして活躍している。「広く、深く、エンジニアリングを極めたい」と考える中野氏が選んだ「フィールドエンジニア」の道で、どのような働き方が実現できるのか。(執筆:畑邊康浩、撮影:編集部)

──自動車整備士になろうと思ったきっかけを教えてください。

[中野氏]高校生の時に流行った「頭文字D」という自動車の漫画が好きで、その頃からレーシングドライバーかメカニックになると心に決めていました。でも、どうすればなれるのかを調べていくと、レーシングドライバーになるのは狭き門で、選手寿命も長くないことが分かり、メカニックの方へと興味が傾いていったのです。

──もともと機械を触るのが好きだったのでしょうか?

[中野氏]私は「機械いじり」が好きというよりは、自分が所有しているものがどのように成り立っていて、どうやって動いているのかを知らないまま使いたくない、全てを知らないと気が済まない、そんな性分なのです。学生時代は、所有していた原付バイクを限りなくバラバラにして組み立てるということを、毎日のようにやっていました。そうする中で、全ての部品に役割があることに気づき感動したことを覚えています。高校卒業後の進路も迷わず自動車整備科のある専門学校を選び、在学中の2年間でさらに深い知識を身に付けました。

──自動車整備士の就職先もさまざまな選択肢があったと思いますが、最初の就職先はどのような観点で選んだのでしょうか?

[中野氏]専門学校卒業後は、メーカー系のカーディーラーに自動車整備士として就職しました。この選択には、明確な理由があります。自動車に実際に乗っているお客さまに、より近い位置で仕事をしたかったからです。

先ほど「全てを知らないと気が済まない性分だ」という話をしましたが、本当に自動車のことを100%知ろうと思うと、お客さましか知り得ない情報を、ご意見やクレームといった形でお話しいただく必要があります。自動車整備士はその情報をいち早く知ることができますので、それが自分の成長にもつながると思ったのです。

──カーディーラーではどのようなご経験をされましたか。

[中野氏]それまで個人の楽しみ、趣味でやっていたことが「仕事」になり、かなりのプレッシャーを感じました。自分の所有物ではなく、お客さまの車を整備して対価を頂くのですから、それも当然のことです。

扱っている商品も家の次に高価なもので、どのお客さまも愛車への思い入れをお持ちです。ですから、それぞれのお客さまの車への想いに対していかに寄り添えるかが、サービスにご満足いただく上でのカギになります。自動車整備士はただ車を直せば良いだけでなく、その上でお客さまが本当に求めていることをつかみ、丁寧に対応していく必要があるのです。自動車整備士として多くのお客さまと接した経験を通じて、物事を深く考える力、周りの作業者を俯瞰してみる力、お客さまと整備士をつなぐ力が身に付きました。

自動車整備士として経験を積んできましたが、入社から10年が経とうとした頃、会社から工場長にならないかと打診を受けました。しかし、工場長になると仕事の大半が管理の仕事になり、お客さまとの接点や現場で仕事をする機会が少なくなってしまいます。お客さまや現場に近いところで仕事をしたい自分にとって、工場長の話を受けるか、自動車整備士として現場でキャリアを積むのか、それとも、自動車業界は一段落つけてさまざまな分野の技術に挑戦してみるのかを考えたときに、転職することを決めました。ちょうど30歳の頃です。

「エンジニアリングを極める」ために、自動車以外の領域へ知識を広げたかった

──次の就職先として、メイテックフィルダーズを選んだのですね。

[中野氏]登録していた転職サイトからのメールで、メイテックフィルダーズを初めて知りました。聞いたことのない会社だったので、気になってメールを読んでみると、エンジニアの派遣会社であること、多種多様なエンジニアリングの仕事があり、日本全国のさまざまなクライアントで働けることが分かりました。

当時、転職先の候補としては、宇宙開発関係や自動車の検査機器メーカーなども視野に入れていました。しかし、ずっとエンジニアとしてやっていくためには、勉強し続けないといけない。では何を勉強するかと考えたら、1つの領域や業界を深く掘り下げるのではなく、どんどん他の領域へと知識を広げていかないと生き残れないのではないか。そう考え、幅広い業務経験が積めるメイテックフィルダーズを選びました。

──今までと違う「派遣」という働き方について、どうお感じになりましたか。

[中野氏]正直にいうと最初は少し抵抗がありました。しかし、メイテックフィルダーズは無期雇用型の派遣なので、正社員として雇用されること、一般的にイメージされる登録型・有期の人材派遣とは違うことが分かったので、抵抗感はすぐに払拭されました。

私は転職に当たって、「エンジニアとして一番になる」と長期的な目標を決めていました。「一番」の定義も幅広いですが、私の中では「さまざまなことに応用が利く」という意味で捉えており、広く、深く、エンジニアリングを極めたいと思っています。1つの場所に長くいると悪い意味での慣れが出てくる側面がありますが、メイテックフィルダーズなら、派遣という働き方でさまざまな現場を経験できます。幅広い「技術フィールド」で活躍し続けたいと思い、メイテックフィルダーズの求人に応募し、2016年7月に入社しました。

フィールドエンジニアとして工作機械、生産機械の据付・保守を担う

──入社後はどのようなお仕事をされてきたのでしょうか。

[中野氏]メイテックフィルダーズには、大きく分けて2種類のエンジニアがいます。1つは、派遣先に常駐して設計・開発業務を行うエンジニア。もう1つは、装置・製品メーカーに派遣され、その企業のお客さま(ユーザー企業)のところへ赴いて、装置や設備の据付や保守を行うフィールドエンジニア(以下、FE)と呼ばれるエンジニアです。私は入社時から一貫してFEとして働いています。

私が所属する拠点であるFEセンター東京は、350名以上のエンジニアが所属しており、日本全国のお客さま先へ派遣されて業務対応を行っています。商材とお客さまの声を一番近くで実感できる拠点で、業務内容も多岐にわたり、医療機器、半導体装置、プラントエンジニア、そしてカーモビリティ関係などさまざまです。多種多様な地域と業務内容でキャリアアップを実現できる拠点であり、私もこれまで3社の派遣先を経験してきました。

1社目は、静岡県にある工作機械メーカーでした。主な業務はマシニングセンターの据付・保守です。

そこでは、扱っている機械の大きさにまず驚きました。一番大きなもので戸建住宅クラス、価格も億単位。構成部品も大きくて重いのに対して、求められる加工精度はミクロン単位と、髪の毛の太さよりも微細な、シビアな精度を要求される機械です。時には床上クレーンを使用して作業を行うなど、さまざまな作業を経験しました。

──自動車整備士だった中野さんが工作機械を扱うようになって、直ぐに対応できるものなのでしょうか?

[中野氏]自動車はガソリンで動くのに対して、工作機械は電気がいろいろな部品を動かしていますので、その仕組みの違いには戸惑いました。ただ、機械の構造や使ったことがある工具がほとんどでしたので、手も足も出ないということはなく、仕事をしながら知識を得ていきました。

カーディーラーのときはほとんどが自家用車で、個人のお客さまが相手でしたが、工作機械になると、企業が相手になります。つまり、その機械が故障などで稼働しなくなると、お客さまの損失に直結します。自分の仕事に不備があれば、お客さまの経営に悪影響を及ぼしかねない。そのことを意識するほどに、心をひりひりさせながら仕事をしていました。

この派遣先では4年近く業務を行いました。最後の方では、1つの工場に機械を18台入れる大きなプロジェクトの主担当を任せていただくこともでき、約2カ月にわたるプロジェクトのスケジュールの組み立てから、約30名のメンバーの人員配置、据付先のお客さまとの折衝業務まで経験することができました。

──次の派遣先ではどのような業務に携わったのですか?

[中野氏]2社目は神奈川県にある生産機械のメーカーで、2020年から約2年就業しました。担当したのは、歯磨き粉や洗顔料などに代表されるチューブ充填機の据付・保守業務です。

この充填機は1分間に80~120本のチューブに材料を充填し、閉じるところまでを行います。目まぐるしい速さでさまざまな部品が連携して動作しており、少しでも不備があると生産設備全体が止まり、生産ロスにつながるため、寸分違わぬ保守が必要でした。また、お客さまごとに細かい仕様も異なるため、新台を入れるプロジェクトを担当する際は、メーカー、据付先のエンドユーザー、そして私たちの三者で綿密な打ち合わせをした上で実務フェーズを完遂しました。

──ここでの業務の中で印象に残っている仕事やご経験を教えてください。

[中野氏]このお客さまは外資系企業だったため、製品のマニュアルも全て英語でしたし、外国籍の社員も多く、英語で話す必要がありました。それまで英語を使うことはほとんどありませんでしたが、英語を学ぶよい機会だと捉えて猛勉強しました。新しい仕事も覚えながら英語の勉強もするのは大変でしたが、おかげでビジネス上の意思疎通をするには十分な英語力が身に付きました。

ADAS装置を扱う派遣先で再び自動車の世界へ

──3社目となる、現在の派遣先ではどのようなお仕事をされていますか。

[中野氏]現在の派遣先は2022年1月から就業しており、主な業務は後付けADAS(先進運転支援システム)装置の保守、設計変更の折衝など、多岐にわたります。

ここでは海外メーカーの製品を商材として扱っているのですが、製品の設計が日本国内の規格や仕様に合っていないため、開発元の方たちとやりとりしながら、日本の自動車や法律で求められる仕様に合わせた設計に変えていきます。またフィールドエンジニアとして、ADAS装置を車に取り付けに行くこともあります。

──自動車の業界に戻ってきたのですね。

[中野氏]その通りです。ただ、自動車整備士の時は機械寄りの仕事でしたが、今の仕事は主に通信・電気系の領域という違いがあります。実作業も全くしないわけではありませんが、仕事の大半は開発元とメールのやりとりや、テスト用の社有車に機器を取り付けて検証するといったものが多いですね。

また最近、派遣先で電気自動車を新しく商材として扱うことになりました。その電気自動車は中国メーカーの車がベースなのですが、それを日本の保安基準に合わせる、保守というよりは開発に近い仕事もしています。

日本ではまだ誰も触ったことがない車なので、中国メーカーから回路図や整備マニュアルを取り寄せたり、それを日本語に翻訳することもしています。また、その車とADAS装置をセットで売る仕組みをつくるといったことも任されており、全く未知の領域に取り組んでいます。

新しい仕組みをつくるのは大変な面もありますが、大変だからこそ面白い。日々、楽しみながら仕事に取り組んでいます。

働き方や仕事を選ぶことができ、その実現を支援する研修環境も充実

──転職されてから今までの仕事についてお聞きしてきましたが、メイテックフィルダーズで働くことの魅力はどのようなところにありますか?

[中野氏]やはり何といっても、いろいろなお客さまへ行く機会があることです。何気なく生活していたら絶対に触れることがなかったであろう製品に触れ、その仕組みを知ることができます。製品だけでなくさまざまな業務、会社、人との出会いがあり、転職してよかったと思っています。

また、メイテックフィルダーズでは私と正反対の働き方も実現できます。つまり、1つの場所で技術を極めることもできる会社なのです。時勢にもよりますし、お客さまの事情もあるので常に100%希望通りの派遣先を選べるとは限りませんが、本人の頑張り次第で働き方を選べること、エンジニアが望む働き方を支援してくれる営業スタッフがいることが、メイテックフィルダーズの最大の魅力であり、強みであると思っています。

そして、もう1つの大きな魅力は、エンジニアが学習し続けることができる環境が用意されていることです。例えば機械系のエンジニアが、電気系にも知識や仕事の幅を広げたいと思ったら、それに合った研修や学習コンテンツが用意されています。また、メイテックフィルダーズにはさまざまなバックグラウンドを持つエンジニアが4,000名近くいて、さまざまな企業に派遣されて仕事をしています。そこでそれぞれが得た知見を、お客さまの機密に触れない範囲で社内のエンジニア間で垣根なく共有する「つながりの文化」も、当社の特長の1つです。

──中野さんは社内でエリアデザイナー(AD)としても活動されているとのことですが、ADとはどのような役割を担っているのでしょうか。

[中野氏]ADとは端的にいうと、所属拠点のエンジニアの働き方や学びをサポートする役割と捉えていただければよいです。所属拠点のエンジニア一人一人と対話しながら、どのような仕事や働き方をしたいかを聞いて、ニーズに合った研修コンテンツをデザインします。自身が研修を実施することもありますが、研修テーマに応じてそれを得意とするエンジニアに声をかけて資料を作成してもらったり、講師を務めてもらうことが多いです。

また現在は、これから先必要になるであろうIT系・電気系の領域を中心に研修計画を練っているほか、資格取得に向けた実践的な研修も実施する予定です。やはり、単に社内で研修を受けただけよりも、公的な資格を取得した方が、お客さまへ技術力を伝える強い武器となります。このような狙いも含めて、所属拠点のエンジニアがそれぞれのフィールドで活躍できるよう、日々ADとしての活動に勤しんでいます。

──最後に、中野さんが今後目指すエンジニア像、キャリア展望を教えてください。

[中野氏]転職する前に心に決めた「広く、深く、エンジニアリングを極めたい」という思いは、今も変わっていません。メイテックフィルダーズでのさまざまな経験を通じて、その想いはより具体化し、今後はエンジニアに求められる力をバランスよく備えた人材になりたいと考えています。

エンジニアに求められる素養としては、Sales(セールス)、Support(支援)、Sustainable(持続的)、Specialist(特化型)、Suitable(適任)、Superior(高次元)、Synergy(相乗効果)などがありますが、私の場合は幅広い分野に対応できるエンジニアになりたいので、Specialistを除く6つの「S」をバランスよく身に付け、より高次元での業務を行っていきたいです。

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ライタープロフィール
畑邊 康浩
編集者・ライター。語学系出版社で就職・転職ガイドブックの編集に携わった後、人材サービス会社で転職情報サイトの編集に従事。2016年1月からフリーランス。主にHR・人材採用、テクノロジー関連の媒体で仕事をしている。


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