微細ガラスフィルターを用いた小型環境発電機を開発 理研など研究グループ

理化学研究所は2022年10月20日、生命機能科学研究センターと東京電機大学、奈良先端科学技術大学院大学の研究グループが、ガラスと水の電気的相互作用を利用し、圧力で水を流すことで電力を発生させる圧力駆動型の小型環境発電機を開発したと発表した。この技術を用いれば、人の歩行などのゆっくりした動きを利用した発電も可能になり、身の回りの電子機器の電源への活用が期待できる。

共同研究グループは、水(H2O)が自発的に水素イオン(H+)と水酸化物イオン(OH)に解離していることに着目。水中で表面のH+が解離し、負に帯電する性質を持つガラスで微細流路を作製し、そこへ圧力で水を流した。このとき、H+は流路に入りやすく、OHは入りにくいため、イオンの分離が生じる。

この状態で流路の入り口と出口をワイヤーで接続すると、出口では水素ガス(H2)、入り口では酸素ガス(O2)が生じ、電流が流れる。このとき生じるH2はごくわずかで、残った水は再び一定割合でイオンの電離が生じるため、水を流路に戻せば繰り返し発電できる。

さらに電力を高めるため、多くの流路が集積する微細ガラスフィルターを用いて、圧力をかけても壊れにくく、大きな電力を得られる装置を作成。足踏みによって装置に水が流れるようにした。この装置を使って体重60kgの荷重をかけ、50mLの水を流したところ、発電性能は電圧18V、電流0.26mA、電力4.8mWで持続時間1.7秒、エネルギーは6.8mJ、発電効率は0.017%という結果を得られた。さらに実際の電気機器を作動させられるかを実験したところ、小型LEDの点灯や小型ファンへの蓄電、ワイヤレス通信などに成功した。

研究グループは、原理的には装置を靴の中に仕込める程度にまで小さくできるとしており、将来的には歩くことで点灯するライトや携帯型の小型扇風機、健康管理デバイスなどへ応用が可能だとしている。

研究成果は、2022年10月20日付の科学雑誌「Scientific Reports」に掲載された。また、理研は「発電デバイスおよび発電方法」として特許を出願している。

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