リチウム金属負極を用いた全固体電池を作製し、-25~120℃での動作を実証――新しい焼結機構を活用 九州大学

九州大学は2024年2月13日、同大学大学院総合理工学研究院の研究グループが、新しい焼結機構を活用することで、焼結温度を250℃以上低減し、焼結温度750℃を維持しつつ、リチウム(Li)金属に対する安定性を確保する電解質を発表した。Li金属負極を用いた全固体電池を作製し、-25~120℃での動作も実証している。

現在、リチウムイオン電池が広く普及しているが、可燃性の有機電解液が使用されており、発火事故が度々ニュースになっている。近年は、電解液を固体電解質に置き変えた全固体電池で安全性を高める研究が進められている。中でも酸化物系の固体電解質は、発火や有毒ガス発生のない安全性の高い電池として注目されている。

しかし、酸化物電解質は材料間の接合に高温焼結(≥1000℃)が必要で、電極材と電解質材が反応してしまい電池化が困難だった。研究グループはこれまでに、電解質材の一種であるLi7La3Zr2O12(LLZ)へ低融点焼結助剤をナノレベルで複合化し、750℃での焼結を実現してきたが、低温焼結を促す焼結助剤の添加はLi金属に対する安定性を著しく低下させるという欠点があった。

研究グループは、上記の欠点を新しい焼結機構の活用によって克服。詳細な分析により、Li-Sb-O酸化物とLi-B-O酸化物の2種類の焼結助剤と、二酸化炭素(CO2)が連続的に相互反応することが低温焼結に寄与していることを明らかにした。

これまで不可能だった(Li)-B-O酸化物の溶融状態維持をこの連続的な相互反応によって実現した。液相焼結が進行することが鍵となっており、この機構の活用で、ビスマス(Bi)を含む材料組成を用いずに低温焼結できる。これにより、アンチモン(Sb)を含む組成へ変更でき、Li金属に対するすぐれた安定性を実現した。電解質特性として重要なイオン伝導率でも、実用レベルを超える特性を有している。

開発した材料を活用し、全固体電池を電極材料と一括焼結プロセスで作製。その電池特性を評価した結果、室温環境で60サイクル充放電後の容量維持率が98.6%だった。これは、既報のガーネット型酸化物を用いた一括焼結電池の中でトップレベルの結果となる。また、-25~+120℃といった従来の有機電解液を用いた電池では使用できなかった温度範囲でも電池動作することを確認した。

今回の研究により、従来のLiイオン電池では、これまで使用ができなかった過酷環境への応用が期待される。今後、充放電サイクルに伴う電池劣化要因を特定し、容量、出力、耐久性を高い次元で実現できる電極微構造要件導出につなげていく。

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Li金属負極を用いた全固体電池を作製 -25 ºC~120 ºCでの動作も実証 | 研究成果 | 九州大学(KYUSHU UNIVERSITY)

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