- 2022-12-23
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- Leif Katsuo Oxenløwe, インターネット, チャルマース工科大学, デンマーク工科大学(DTU), 光ファイバー通信, 周波数コム, 学術
今日のインターネットの基盤技術として光ファイバー通信が重要な役割を担っている。年々増加しているデータ通信量に対応するため、光ファイバーケーブルの構造や、データ伝送方式の技術革新が続けられている。
今回デンマーク工科大学(DTU)とスウェーデンのチャルマース工科大学の国際研究グループは、1つのレーザーと1個のフォトニックチップを使って、データストリームを数千のチャンネルに分割し、毎秒1.8ペタビット(1.8Pb/s)の速度で7.9キロメートルにわたって送信することに成功した。現在インターネット全体のデータ流通量は毎秒1ペタビット (1Pb/s)程度と言われており、今回の研究成果はそれの約2倍に相当するデータ量になる。
これまでも、大型の装置を用いて最大10.66Pb/sのデータ伝送速度が達成されていたが、今回の研究は、フォトニックチップ1個を光源として用いた伝送記録となる。この技術により、従来よりもはるかに多くのデータを送れる、シンプルな単一チップを作ることができる。エネルギーコストの削減や帯域幅の拡大も期待される。
研究チームはまず、データストリームを37のセクションに分割し、それぞれを光ファイバーケーブルの別々のコアに送出した。次に、それぞれのセクションを、さらに223種類の周波数(色)に分割した。周波数の分割には「周波数コム」という技術が使われている。すべての周波数スペクトルは、くしの歯状に等間隔に並んでいる。よって、異なる周波数のデータを互いに干渉させることなく同時に伝送することが可能となり、各コアの容量が大幅に増加したという。光源はカスタム設計されたフォトニックチップで、1つの赤外線レーザーの光を使って、多くの周波数の虹色のスペクトルを作り出すことができる。
さらに研究チームは、今回の実験に使用したチップと同じものを使って、データ通信の基本的な可能性を理論的に検証するための計算モデルを作成した。計算の結果、チャルマース工科大学製のシングルチップとレーザー1つで、最大100Pb/sの伝送が可能であることが示されたという。
DTUのLeif Katsuo Oxenløwe教授は次のように語っている。「私たちのソリューションは、インターネットのハブやデータセンターに設置されている何十万ものレーザーを置き換える可能性を提供します。私たちは、気候変動に影響を与えないインターネットの実現に貢献する機会を得たのです」