- 2022-11-21
- 化学・素材系, 技術ニュース
- Journal of Materials Science, ジルコニウム, チタン, 東京理科大学, 極超音速航空機, 炭素繊維強化炭素複合材料, 炭素繊維強化超高温セラミックス, 熱力学, 研究, 複合材料
東京理科大学は2022年11月17日、同大学大学院工学研究科らの研究グループが、ジルコニウム(Zr)とチタン(Ti)合金をベースに炭素繊維強化超高温セラミックス複合材料(C/UHTCMC)を開発したと発表した。2000℃以上の超高温に耐えられ、極超音速航空機やロケットへの活用が期待される。
研究グループは、溶融含浸法によりZrとTi、Cを主成分とする3種類のC/UHTCMCsを合成。これらを使って異なる条件でアーク風洞試験を行った。その結果、複合材料中のZrの含有量が増加すると、アーク風洞試験後の厚さが増加し、表面に形成される酸化物の融点も上昇することが分かった。
また、複合材料の表面に生成した液相が外表面に向かって流れることで複合材料の酸化が促進されるほか、Tiを多く含む炭化物に対してZrを多く含む炭化物の酸化が熱力学的に優先されるため、温度条件を変えても複合材料の劣化が抑制されることを確認した。
そのうえで、表面分析や熱力学解析によって材料表面に形成された酸化物の評価を行ったところ、材料表面に形成されたTiとZrの酸化物は主にTiO2固溶体、ZrTiO4固溶体、ZrO2固溶体であり、これらが複合材料のさらなる酸化を抑制できることが分かった。特にZrとTiの比率が80:20の場合、2000℃までZrO2固溶体と液相を維持し、2600℃以上では表面に液相のみが形成され、表面酸化物が消失することを確認した。
この結果を受け、研究グループはZrとTiの比率を80:20にした複合材料が超高温の環境でも減少量が少なく、耐酸化性も高いため、耐熱材料に最も適していると結論付けた。
従来の炭素繊維強化炭素複合材料は軽量で耐熱性のある材料として、スペースシャトルや極超音速機の部材に使われているが、高温下での耐酸化性が低く、用途が制限されるのが課題だった。マッハ5(時速約6200km)以上で飛行する機体は、空力加熱によって表面温度が数千℃に達するため、こうした高温に耐えられる新たな材料の開発が求められている。
今回の研究は重工メーカーから相談を受けたのがきっかけだったといい、研究グループは「これらの材料が耐熱材料として実用化されれば、超高速旅客機の実現も可能となる」としている。
研究成果は2022年10月27日、国際学術誌「Journal of Materials Science」にオンライン掲載された。