ウイルス感染に関する数学モデルを応用し、高導電性塗料研究に進展

英サセックス大学の研究チームが、開発した高導電性塗料の電気伝導メカニズムを「爆発的パーコレーション」と呼ばれるプロセスで説明できることを実証した。同数学的プロセスは、人口増加やウイルス感染の爆発的な増加メカニズムの理論モデルの応用であり、材料科学では新しい発見である。

同研究成果は2022年11月11日、「Nature Communications」誌に掲載された。

研究チームは、直径0.2μm程度の球形樹脂を分散したラテックス中に酸化グラフェンを加え、この分散液を乾燥させて酸化グラフェンが球形樹脂の間に挟まった構造のラテックスフィルムを作製した。酸化グラフェン含量を増やすと、最終的にフィルム内に酸化グラフェンがパーコレーションネットワークを形成した。

さらに、導電性のない酸化グラフェンの化学欠陥を除くために150℃で加熱したところ、単に導電性を示しただけでなく、グラフェンだけで作った場合よりも高い導電性を示した。

解析の結果、加熱によってグラフェンとポリマーが化学変化を起こして小さな分子が生成され、それが導電性の架橋点となって、導電性を爆発的に増加したことが分かった。このように、パーコレーションの時点で架橋点が(今回は化学変化により)爆発的に増加し、つながっていない場合とはまったく異なるネットワークを形成する現象は、「爆発的パーコレーション」と呼ばれる。

サセックス大のAlan Dalton教授は、今回の発見に対して「われわれが高導電性塗料を開発したのは10年前になります。本研究を進展させる手掛かりが、われわれの身近に関わりのある人口増加やウイルス感染に関する数学的プロセスにあったという発見は、私にとって驚きであり、喜びでもありました」と説明した。

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