- 2023-2-1
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- CNT(カーボンナノチューブ), CSCNT, GSIクレオス, ORLIB, シリコン, ドローン, リチウムイオン二次電池, 次世代電池, 負極材料
ORLIBとGSIクレオスは2023年1月31日、カップ積層型カーボンナノチューブ(CSCNT)を純シリコン(Si)負極に充填したリチウムイオン二次電池(LIB)を開発したと発表した。
LIBの標準負極材料には、主にグラファイト(黒鉛)が用いられている。ただし、グラファイトは比容量が370mAh/gに留まるため、エネルギー密度の向上に対する要求に応えられなくなることが課題となっていた。
グラファイトを代替する材料としては、負極容量が4200mAh/gと大きく作動電位も低いほか、低コストで調達できるSiが有望視されている(冒頭の画像は、各種負荷材料の理論容量を比較したもの)。
しかし、Si粒子へLiイオンが出入りすることで粒子が崩壊して負極機能が損なわれることや、Si表面上で進む電解液の還元分解などの副反応に伴って、不可逆的に容量が減少することが実用化への妨げとなっていた。
ORLIBは今回、GSIクレオスが独自に展開するCSCNTをSi負極に添加し、ORLIB独自の加圧電解Liプレドープ技術を適用した。CSCNTは特異的な結晶構造となっており、外部応力に対する変形自由度や分散剤フリーでの分散性に優れるほか、既存のCNTと比較して中空孔サイズが大きい点が特長となっている。
また、GSIクレオスは、同社独自の「CSCNT線長調整」技術を用いて繊維長を最適化し、分散剤フリーの「CSCNT超高分散液」をORLIBに提供した。
上記により開発した純Si負極電池を用いて、同重量の既存の電池と放電曲線で電圧が急落するまでの容量を比較した。2.8Vまで用いる場合、従来の電池が1Ahまでなのに対し、開発した電池では2倍弱の1.8Ahとなっている。また、セル自体のエネルギー密度は従来品が158 Wh/kgであるのに対し、開発品は280Wh/㎏となった。
加えて、同電池を内蔵したマイクロドローンでは、既存の電池と比較して飛行時間が60%向上した。
加えて、充放電100サイクル後での放電容量が90%以上、充放電効率が99.7%以上を保つことも確認した。多層CNT(MWCNT)やグラフェンと比較して優れており、グラファイトに匹敵する水準となっている。
ORLIBの発表によると、インフラ検査用ドローンなど、長期サイクル特性よりも電池の高エネルギー密度を優先する用途であれば、100サイクル程度でも市場の要求を満たすことが可能だという。
Si負極の採用と大容量LIBの開発により、小型および中型ドローンの飛行時間の大幅な延長が期待される。また、LIBを大型化することで、大型ドローンなどさまざまな高速移動デバイスを実用化できる可能性もある。
両社は現在、軽量および高エネルギー密度のLIB実現に向けて、容量密度の大きなSiに最適な正極材料の開発に取り組んでいる。