推力は変わらず、より静かにドローンを飛ばせるトロイダルプロペラ――2022 R&D 100 Awardsを受賞

マサチューセッツ工科大学リンカーン研究所の研究チームは、人間が最も敏感に感じる周波数帯の信号を減少させる、ドローン向けのトロイダルプロペラを作製した。同プロペラは、現在のマルチローター用プロペラに代わるとして、2022年8月22日に発表された「2022 R&D 100 Awards」を受賞した。R&D 100 Awardsは、「イノベーションのオスカー賞」や「エンジニアリングのノーベル賞」と呼ばれ、販売またはライセンス供与が可能な新しい商業製品や技術、材料の技術的重要性を表彰するコンペティションだ。

宅配や空撮、捜索/救助、農業監視、産業やインフラの検査などのさまざまなサービスへ、ドローンの利用が提案されている。また、ドローンは都市部や渓谷、災害地などの狭い場所へも飛行して入っていけるため、危険な場所に人間を送り込むのに代わる選択肢を提供する。

こうした多様な用途へのドローン配備を制限している要因の1つが、ドローンの騒音だ。NASAのラングレー研究センターによる2017年の心理音響学実験では、人間は小型マルチロータードローンが発する騒音に対して、他の交通機関の騒音よりも高いレベルの感度を示すことが分かった。

そこで研究チームは、人間が最も敏感に感じる周波数帯の信号を減少させるトロイダルプロペラを作製した。トロイダルプロペラは、2枚のブレードが共に輪になっており、一方のブレード先端がもう一方のブレードに戻ってくる構造になっている。この閉型構造により、ブレードの先端で発生する渦を巻く空気の抵抗を最小化し、プロペラ全体の硬さは強化され、重量や電力消費を増やす補助部品なしに騒音の低減が可能だ。

さらに、回転するプロペラが、ドローンの軌道上にある物体を切ったり引っ掛けたりする可能性を減らすという利点もある。3Dプリント技術により信頼性の高い製造が可能で、さまざまなマルチローターのモデルやタイプに合わせてプロペラをカスタマイズすることができる。

トロイダルプロペラの試作品を市販のドローンに搭載したテストでは、同等の出力レベルで従来のプロペラに匹敵する推力レベルがあることを実証した。また、トロイダルプロペラを搭載したドローンは、騒音レベルが低減したため、通常の半分の距離でも人間の聴覚に負担をかけずに作動できた。

トロイダルプロペラはドローンの騒音問題を軽減するため、ドローンのさまざまなサービスへの導入が期待される。

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