- 2023-2-24
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- コバルト酸ストロンチウム, 全固体電気化学熱トランジスタ, 北海道大学, 北海道大学電子科学研究所, 微小廃熱, 熱トランジスタ, 熱制御デバイス, 研究, 電気スイッチ, 電解液
北海道大学電子科学研究所の太田裕道教授らの研究グループは2023年2月22日、熱の伝わり方を電気スイッチで切り替える全固体電気化学熱トランジスタを実現したと発表した。電気スイッチで熱の伝わり方を切り替える技術に向けた大きな前進となる。
熱トランジスタは、電流のオンとオフを切り替える半導体トランジスタのように、熱流のオンとオフを切り替えることができるデバイスで、実現すれば電子機器から放出される微小廃熱の有効再利用につながるだけでなく、半導体集積回路の熱制御デバイスなど、これまでなかった装置として応用できる。
熱トランジスタは、これまで世界中でいくつか提案されてきたが、いずれも実用上の問題があった。また、電解液などの液体を利用した電気化学熱トランジスタは、液漏れの心配があり、実用化には至らなかった。
研究では、液体を一切使用しない全固体電気化学熱トランジスタの開発に取り組んだ。活性層には、結晶中の酸化物イオンの出し入れができるコバルト酸ストロンチウムム(SrCoOx、2 ≤ x ≤ 3)を用いた。固体電解質には、酸化物イオン伝導性固体電解質であり、単結晶基板が入手できるイットリア安定化ジルコニア(Y2O3安定化 ZrO2、YSZ)を選択した。
パルスレーザー堆積法とスパッタリング法を駆使して作製した熱トランジスタは、多層膜で構成。SrCoOx薄膜とYSZの化学反応を防ぐ目的で、ガドリニウムドープ酸化セリウム(GDC)薄膜を挿入している。この熱トランジスタを空気中、280℃に加熱。電気化学的酸化/還元処理を施すことで、SrCoOxの熱伝導率を繰り返し変化させた。
まず酸化、還元の繰り返しによるSrCoOx薄膜の結晶格子変化を調べたところ、SrCoOx結晶は崩れず、安定していた。次に繰り返し酸化、または還元した後に熱伝導率を計測。完全に酸化されたペロブスカイト構造のSrCoO3は、高い熱伝導率~3.8W/m K(平均)を示したが、完全に酸素が欠損した欠陥ペロブスカイト構造のSrCoO2は低い熱伝導率~0.95W/m K(平均)を示した。熱伝導率のオン/オフ比は4であり、これは電解液やイオン液体などの液体を用いた熱トランジスタと比較して遜色ない値だった。
今回作製した全固体電気化学熱トランジスタは、将来の熱管理技術に向けた次世代デバイスになる可能性を秘めており、引き続き特性改善に取り組んでいる。将来的には、電気制御できる熱のシャッターなどの熱制御デバイスとしての応用が期待される。
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