- 2024-11-11
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米カリフォルニア大学アーバイン校の研究チームは、イカの皮膚の色変化の特性に着想を得て、洗濯可能で通気性を備えた温度調整素材を開発した。さまざまな布地に組み込むことが可能だ。研究成果は、『APL Bioengineering』誌に2024年10月1日付で公開されている。
「イカの皮膚は複雑で、複数の層で構成されており、光を操って体全体の色調や模様を変化させています」と、論文の著者であるAlon Gorodetsky氏は述べている。イカの皮膚には、筋肉の作用により拡張状態と収縮状態とを遷移する、「色素胞(chromatophore)」と呼ばれる色素細胞が存在する。皮膚が可視光線を透過し反射する方法を変えることで、イカの体色は変わって見える。
研究チームが開発した温度調整素材は、可視光線の代わりに赤外線スペクトルを変化させる。サーマルカメラで利用されているように、人間の体温が上昇すると熱の一部は赤外線放射として放出される。開発した素材は、赤外線放出を操作することで体温調節機能を持たせた。特筆すべき点は、着用者の希望する温度に細かく温度を調節できるということだ。
この素材は、ベースとなるポリマーを複数の銅の小片で覆っている。素材を伸ばすと、銅の小片は互いに分離し、赤外線の伝達と反射の方法が変化して熱特性を調整する。
この複合素材の機能性を高めるために、研究チームは洗濯可能で、通気性を持ち、布地に統合できるように改良した。まず、複合素材に薄層を重ね、洗濯による劣化を防ぐことに成功した。次に、通気性を与えるために微小孔を配列したことで、空気や水蒸気の透過性は綿織物と同等まで向上した。さらに、温度調整素材にメッシュを接着し、簡単に布地と統合できることを実証した。
フーリエ変換赤外分光法による赤外特性試験と、発汗ガードホットプレート法による動的体温調節特性試験により、これらの改良により素材の熱管理性能が損なわれないことが確認された。
Alon Gorodetsky氏によると、新素材はほとんどのウェアラブル用途に利用できる可能性があるが、特にスキーウエア、保温ソックス、断熱手袋、防寒帽など、防寒衣料に適しているという。