- 2023-5-18
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- Boyan Slat, Ocean Cleanup, Scientific Reports, クラウドファンディング, バリアシステム, プラスチックゴミ, 太平洋ゴミベルト(Great Pacific Garbage Patch:GPGP), 学術
オランダのThe Ocean Cleanupは、海からプラスチックゴミを取り除くことをミッションとし、2013年に当時18歳のBoyan Slat氏により設立された非営利団体だ。ギリシャの海で泳いでいた時にプラスチックゴミの多さにショックを受けた彼は、研究資金をクラウドファンディングで集め、同社を設立したという。同社は、ミッションを達成するために、世界中の河川でプラスチックを捕獲するシステムネットワークの拡大と、海に浮遊しているプラスチックゴミを回収する海洋浄化技術を推し進めている。
カリフォルニア州とハワイ州の間に位置した北太平洋の海域は、大量のプラスチックが浮遊/蓄積した集積帯となっており、「太平洋ゴミベルト(Great Pacific Garbage Patch:GPGP)」と呼ばれている。同社は、2023年4月4日、GPGPで200トンのプラスチックゴミの回収に成功したと発表した。
廃棄物を集めるために、同社はU字型の長いバリアーを使ったシステムを開発した。同システムでは、海の野生動物を保護するために、さまざまな工夫がなされている。例えば、廃棄物収集網の設計において、プランクトンが通過できるよう、大きなメッシュサイズが採用され、また、魚が安全に泳いで脱出できるよう、脱出口が設けられている。さらに、同システムは、海の下をゆっくりと移動して騒音を抑え、海の野生動物への影響を最小限にしている。
同社では、現場での継続的なデータ収集と海洋生物の専門家からのアドバイス、独立したレポート、環境影響評価を組み合わせ、同社の浄化活動が海洋環境と生物に最大限の利益をもたらせるように取り組んでいるという。
2022年9月1日に同社を中心とする共同研究チームが「Scientific Reports」誌に発表した研究によると、GPGPで収集したプラスチックゴミの大部分は、漁網やロープ由来であった。この事実は、地球規模の問題解決における、漁業が果たす役割の重要性を示している。
同社は、2040年までに、海に浮遊しているプラスチックの90%を取り除きたいとしている。浄化作業を迅速にするため、全長2.4kmの巨大なバリアシステムの開発を進めている。
関連リンク
- System 002 and Marine Life: Prevention and Mitigation
- Industrialised fishing nations largely contribute to floating plastic pollution in the North Pacific subtropical gyre | Scientific Reports