- 2023-6-2
- 化学・素材系, 技術ニュース
- 6G, Beyond 5G, Nanophotonics, サーマルマネジメント, テラヘルツ波帯, テラヘルツ電磁波, メタアトム, メタサーフェス, メタレンズアンテナ, 東京農工大学, 東京農工大学大学院, 正方形金属構造, 研究
東京農工大学大学院の鈴木健仁准教授らの研究グループは2023年5月30日、0.3テラヘルツ (波長:1mm) で動作する、無偏光/超高屈折率/低反射率の新材料(メタサーフェス)を開発したと発表した。全方向の偏光に対し、10を超える超高屈折率と1%の低反射率を達成している。
本研究成果は、ドイツ科学誌『Nanophotonics』に2023年5月31日付で公開されている。
テラヘルツ波帯の電磁波は、10の12乗という非常に高い振動数を有しており、これまでテラヘルツ電磁波を操るレンズなどの光学部品には、屈折率や反射率などの材料特性が固定されている自然界由来の材料が用いられてきた。自然界の材料では実現できない超高屈折率を低反射率で実現できれば、自由自在にテラヘルツ電磁波を操る光学部品を生み出せる可能性がある。
研究では、6G (Beyond 5G) 通信での活用が期待される周波数帯である0.3テラヘルツで、どのような偏光方向に対しても超高屈折率かつ低反射率で振る舞うメタサーフェスを実現した。 メタサーフェスは、誘電体基板の表と裏の両面に、テラヘルツ電磁波の波長の3分の1程度の大きさのメタアトムと呼ばれる正方形金属構造を対称に配置している。
メタアトムの大きさや間隔を設計し、メタサーフェスの比誘電率と比透磁率を近い値でかつ高い値に制御することで、自然界には存在しない10を超える超高屈折率で1パーセントの低反射率を達成した。
作製した独自のメタサーフェスは、0.31テラヘルツで屈折率14.0+j0.49、反射率1.0%、透過率86.9%の材料特性を有することを確認している。どのような偏光方向に対しても、超高屈折率かつ低反射率で振る舞うことも確認している。
開発したメタサーフェスは、シート状の平面構造で、自然界の材料では実現できない超高屈折率かつ低反射率を達成している。研究グループは、6G通信や7G通信などの未来の情報通信社会に向け、開発したメタサーフェスを用いたテラヘルツ波帯の周波数の電磁波を操るメタレンズアンテナと光源の融合に向けた研究を進めている。さらに、開発したメタサーフェスを赤外域まで高周波化し、熱の放射を制御するサーマルマネジメントへの応用にも取り組んでいる。