3Dグラフェンを使用して低炭素排出を目指した、電気自動車用リチウム硫黄電池

大手自動車メーカーStellantisは2023年5月25日、電気自動車(EV)用リチウム硫黄電池技術の事業化を進めるため、世界にさきがけて3Dグラフェンを製造する米Lytenへの投資を発表した。

Stellantisは、2022年にベンチャーファンドであるStellantis Venturesを立ち上げ、自動車分野における持続可能技術への投資に取り組むことを表明している。この合弁会社は、モビリティ産業におけるLytenの3Dグラフェンの商業応用を加速することを目指しており、応用先には、リチウム硫黄電池のほか、軽量複合材料や車載センサーが含まれている。

グラフェンシートは、ナノレベルで折り曲げたりねじったりして高次元化すると、桁違いに反応性を向上する。Lytenは、独自のリアクター技術により、反応性の高い3Dグラフェンを製造/販売している。同社の3Dグラフェンは、用途に適した強度や導電性を選択できるように特性を調節できる。現在、リチウム硫黄電池、複合材料、センサーの3つの用途で実用化に向けて開発中だ。

リチウム硫黄電池は、リチウム金属を負極に、硫黄を正極に用いた二次電池で、従来のリチウムイオン電池と異なり、正極にニッケルやマンガン、コバルトを使用せず、安価な原材料を使用できる。同社の電池には、正極に独自の電池用に調節した3Dグラフェンが用いられ、リチウム硫黄電池の課題であった充放電サイクル特性を改善している。さらに、現在のリチウムイオン電池と比較して、60%のカーボン・フットプリントの低減、2倍のエネルギー密度を達成し、安価で現地調達可能な材料で製造できるため、EVの世界的普及に貢献するという。

2050年までのカーボンニュートラル実現の必要性から、EVの製造が加速し、必要とされる従来のリチウムイオン電池材料の不足が懸念される中、Lytenのリチウム硫黄電池は、有力な代替電池として期待されている。

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