砂漠の乾燥した大気でも水を取り出せる――MIT、塩化リチウムを添加した超吸水性ゲルを開発

Credits:Image: Gustav Graeber and Carlos D. Díaz-Marín

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、砂漠のような環境下でも空気中の水分を吸収できる超吸収性素材を開発した。吸収できる水分量は記録的な量だ。透明で弾力性のあるこの素材は、水分を吸収すると膨張し、さらに多くの水分を吸収できるスペースが作られる。吸収した水分を漏出することなく保持し、加熱により水分を凝縮して超純水として回収することが可能だ。研究成果は、『Advanced Materials』誌に2023年5月18日付で公開されている。

開発した素材は、多くの水分を蓄えておくことができるハイドロゲルと、多くの水蒸気を捕らえることができる塩化リチウムを組み合わせるというアイデアから生まれた。ハイドロゲルは、紙オムツにも使用されるほど高い保水能力がある。また塩化リチウムは引き寄せた水分を保持することはできないが、自身の10倍以上の水分を吸収できる強力な吸収剤だ。

既存の研究では、ハイドロゲルに添加できる塩化リチウム量には限界があった。しかし、研究チームは、これまでは不可能とされた量の塩化リチウムをハイドロゲルに添加することに成功した。その結果、この素材は他の素材では吸収性が制限されるような非常に乾燥した条件を含めて、さまざまな湿度レベルでこれまでにない量の水分を吸収し保持できる。

類似の素材を合成するほとんどの場合、塩水にハイドロゲルを24〜48時間浸し、塩をハイドロゲルに浸透させることで素材を合成していた。しかし、この方法では塩がハイドロゲル中にほとんど取り込まれず、できあがった素材も水蒸気をほとんど吸収しない。

そこで、研究チームは、ハイドロゲルを塩化リチウム溶液に30日間浸漬した。浸漬時間を長くするという単純なアプローチで、1gのハイドロゲル当たり最大24gの塩化リチウムを取り込ませることに成功した。これまでの記録は1g当たり6gであった。

塩化リチウムを含んだハイドロゲルは、どのような湿度条件でも水分を漏らすことなく、これまでより多くの水分を吸収、保持した。注目すべきは、湿度30%という非常に乾燥した環境下で、材料1gあたり1.79gという記録的な水分量を吸収したことだ。

この超吸収性ゲルは低コストかつ高性能だ。特に砂漠や干ばつなどが起こりやすい地域で、飲料水用の水収集デバイスへの応用が期待される。また研究チームは、省エネなエアコン用除湿要素としての利用も想定している。

関連情報

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る