サステナブルな糖類からガソリンを作る――グルコースを脂肪酸に変える大腸菌を開発

Credit: Douglas Levere / University at Buffalo

生物は、グルコースなどの再生可能な糖質をさまざまな炭素を含む低分子に体内で変換できるが、無置換の炭化水素のように細胞のみからでは生成するのが難しい分子もある。ニューヨーク州立大学バッファロー校の研究チームは、遺伝子操作した大腸菌を使って、再生可能な糖質の一種であるグルコースを、ガソリンを構成する分子の一つである無置換炭化水素のオレフィンに変換することに成功した。研究成果は、『Nature Chemistry』誌に2021年11月22日付で公開されている。

今回開発した手法は、生物学と化学が得意とする反応を組み合わせた2段階プロセスで形成されている。

まず微生物がグルコースをオレフィンの前駆体である3-ヒドロキシ脂肪酸に変換できるようにするため、グルコースを栄養源として好む大腸菌に4種類の酵素の遺伝子を導入した。遺伝子操作された大腸菌は、グルコースを摂取すると、脂肪酸を生成するようになった。次に、脂肪酸からオレフィンを作るために、5酸化ニオブ(Nb2O5)という触媒を用いて化学的な手法で脂肪酸の置換部分を切断し、最終生成物であるオレフィンを生成した。

この手法をグリーンエネルギー技術として工業規模で実用化するためには、エネルギーコストを最適化する必要がある。研究チームによると、現状では約8分子のオレフィンを生成するためにグルコース100分子が必要だ。この比率を改善するためには、大腸菌がグルコースからより多くの脂肪酸を生産できるようにすることが重要だという。

また、オレフィンは現在生産されているガソリンにはごくわずかしか含まれていないが、今回開発した手法は、ガソリンに含まれる他の炭化水素の生産に応用できる可能性があると、研究チームは述べている。さらにオレフィンは、工業用潤滑油やプラスチックの前駆体など、燃料以外の用途にも使用されている。

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