オリゴ糖を用いた長寿命レドックスフロー電池の開発

Animation by Sara Levine | Pacific Northwest National Laboratory

米パシフィック・ノースウェスト国立研究所の研究チームが、有機活物質にオリゴ糖を用いた、水性レドックスフロー電池(Aqueous Organic Redox Flow Battery: AQRFB)の容量と寿命を記録的に向上させた。

同研究成果は、2023年7月6日、「Joule」誌に掲載された。

太陽光発電などの再生可能エネルギーの普及に伴い、電力網の安定化のために大規模なエネルギー貯蔵システムが必要とされ、フロー電池は有力候補の1つとして期待されている。フロー電池とは、2種類のレドックス活性な物質を含む電解液を、別々のタンクから循環ポンプを使って電池スタックの正極室と負極室に流入させ、多孔質膜を介して酸化還元反応を起こして充放電する2次電池である。

活物質として無機塩の水溶液を使った、すでに実用化されているフロー電池と比べ、AQRFBは、環境に優しく低コストで安全であり、大規模エネルギー貯蔵が期待され、世界的に開発が進められている。

同研究チームは、AQRFBの次世代設計に関する研究を2021年にScience誌に発表した。当時の研究では、フルオレノンと呼ばれる化学物質の誘導体を負極の電解質として用いるAQRFBが、120日にわたって効率的に作動し、1111サイクル以上でも安定していることを実証した。しかし、開発した電池は、実用化されているフロー電池に比べて充放電速度が遅かったため、改善が必要であった。

今回の研究では、β-シクロデキストリンと呼ばれる溶解性環状オリゴ糖を触媒として負極電解質水溶液に添加し、AQRFBのサイクル特性、電池容量とともに、充放電速度の向上に成功した。

通常、2次電池では充放電の電流密度が増加すると、電池容量の利用率は低下し、サイクル特性なども悪くなる。今回開発したAQRFBでは、溶解性オリゴ糖の均一系触媒を用いた反応経路調節により、3つの特性改善をいっぺんに可能にした。開発した負極を用いたAQRFBは、1年以上にわたって安定して充放電を繰り返し、高い充放電電流と電池容量を維持して動作した。この様に長期に安定したAQRFBの報告は世界初とのことだ。

関連情報

Next-generation Flow Battery Design Sets Records

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