NECは2015年11月2日、ビッグデータの分析から導出される予測データに基づいた判断や計画の最適化を可能にする人工知能技術「予測型意思決定最適化技術」を開発したと発表した。
この技術を用いることで、同社が開発した「異種混合学習技術」(ビッグデータに混在する多数の規則性を発見し適切に適用する技術)などを用いた予測結果に基づき、戦略や計画立案などの従来人手で行っていた高度な判断がソフトウエア上で可能になるとしている。
予測に基づいた大規模な戦略や計画立案の課題を解決
予測結果から人手で行う戦略や計画立案は、大規模な計画立案が困難である他、正確性にも限界が存在した。また従来の自動化技術では、多数の予測の誤差が累積して最終的に判断が不正確になり、予想外の大きな損失が発生するという問題があった。さらに多くの予測式の関係性を考慮した膨大な組み合わせから最適な判断を導き出すためには膨大な計算量が必要になり、解を導き出すためには長い時間を要していた。
今回NECが発表した「予測型意思決定最適化技術」はそのような課題を解決し、「予測に基づいた大規模で高度な判断」をソフトウェアによって超高速かつ高精度に実現するものなのだという。
予測誤差のリスクを最小限にし電力コスト20%削減を実現
予測誤差が累積すると予想外の結果を導きだしてしまうものだが、予測の「典型的な外れ方」のパターンを独自アルゴリズムで分析し、さらにその結果を数理最適化技術と融合、予測誤差を考慮した上で最適化を行う事ができるのがこの技術の特徴の一つ。たとえ予測が外れた場合でもリスクを最小限に抑えることができる。
実際に行われている浄水・配水などの水の運用管理では、浄水や貯水、配水を運用者の経験に基づいて計画していたが、過剰な造水による破棄、非効率なポンプ運用による無駄な電力コストの発生、需要の過小予測による計画変更が頻繁に発生するなどの問題があった。
しかし、この技術を適用することにより、最大で電力コストを20%削減、需要の過小予測による計画変更回数を1/10に削減することが可能であると試算できた。
独自の組合せ最適化アルゴリズムにより、商品価格戦略を1秒未満で算出
多数の予測式から最適な解を導き出すためには、その組合せが膨大なため通常は相当の長い計算時間を必要し、精度も低いという課題がある。
例えば、競合商品の価格と売上の関係を加味した小売店舗における最適な商品価格戦略を立案する場合、50種類の商品に対してそれぞれ値引き候補10種類設定して、取り得る価格戦略は10の50乗という膨大な組み合わせとなり、従来の方法では数時間から数日を要していた。今回の独自の組合せ最適化アルゴリズムを用いることにより、予測式の関係を考慮した大規模な組み合わせを効率的に探索でき、超高速で最適な戦略や計画を導出することができる。
上記の従来数時間から数日を要していた商品価格戦略の例では、1秒未満で店舗の売上を約11%増加できる価格戦略を算出。さらに最適化精度も従来法と比べて約20%向上した。
資源の効率化のためのエネルギー・水・食料の需給予測、物流管理を効率化するための在庫需要予測、小売店舗管理の高度化のための商品需要予測などでの活用を踏まえ、同社は2015年度中に実用化する予定だ。
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