凸版印刷は2021年10月7日、フォトリソグラフィ工法を用いたガラス製マイクロ流路チップの製造技術を開発したと発表した。がんの超早期発見を可能とするリキッドバイオプシー検査や体外診断薬の分野での使用を見込んでいる。
近年、がん検診や臨床検査などの診断技術として、リキッドバイオプシー検査が広まり始めている。採取した血液などの少量の体液で検査できるため、身体への負担が少ないのが利点だ。同検査には一般的に、生体適合性に優れ、光学分析に適したポリジメチルシロキサン(PDMS)を材料として、射出成形法で製造したマイクロ流路チップが使用されている。しかしPDMSは微細加工領域での生産性が低く、原材料の液体シリコーンの価格が高いため、チップが高額になってしまっている。
そこで同社は、液晶ディスプレイ用カラーフィルタの製造で培ったフォトリソグラフィ法による微細加工技術を応用。マイクロ流路チップを大量に、より低コストで製造できる技術の開発に乗り出した。
フォトリソグラフィ法によるマイクロ流路チップには、ガラス基板に塗布したフォトレジスト上に、液体や気体を流すための幅10μm~数mm、深さ1~50μmの流路が形成されている。硬化処理されたフォトレジストの上に、検体や試料となる液体を分注する穴の開いたカバーを装着する構造で、PDMSを材料としたチップと比べ、同等あるいはそれ以上の特性を示すという。
血液や細菌、細胞などを分析する用途向けのマイクロ流路デバイスでは、深さ50μm程度の「深い溝」を必要とするケースがある。同社はフォトレジストの組成や露光プロセスを見直すことで、深さ50μmの流路形成に対応。さまざまな分析用途に合わせて流路をデザインできるようにした。
また、スマートフォンやタブレット、PCなどのデジタル機器向け、液晶カラーフィルタ向けの製造装置を使用。マイクロ流路チップを大型のガラス基板上に多面付けして製造することで、大量生産や低コスト化に対応できるようにしている。
同社は今後、今回試作に成功したガラス製マイクロ流路チップの実用化に向けた実証実験をパートナー各社と実施。2022年3月を目途にフォトリソグラフィ法による量産化技術を確立し、製品化に取り組む。