東大と阪大、長期間体内に埋め込み可能なシート型生体電位センサーを開発

東京大学と大阪大学は2016年4月29日、東京大学の染谷隆夫教授と大阪大学の関谷毅教授らの研究グループが、生体適合性ゲル電極を持つ有機増幅回路シートの開発に成功したと発表した。同研究グループは、新開発したゲル素材をセンサーの電極として応用。同素材を有機トランジスターの増幅回路と集積化し、長期間体内に埋め込み可能なシート型生体電位センサーを製造した。

同センサーは、微弱な生体活動電位の安定計測が可能。動物の心臓に貼りつけて実験したところ、虚血症による異常な心電と正常な心電を測定し、心筋梗塞の部位を正確に特定できたという。

新開発のゲル素材は、ポリロタキサンというヒドロゲルに単層カーボンナノチューブを均一に混ぜて作製した。ヤング率が10kPaクラスと柔軟性が高い上に、アドミタンス(電流の流れやすさ)が100mS/cm2と柔らかい素材としては最大クラス。10Hzから106Hzの広い周波数範囲に渡って、ほぼ同じ大きさのアドミタンスを示す。

同素材の生体適合性試験は、Good Laboratory Practice(GLP)優良試験所基準で認定された第三者機関にて、ISO10993-5(細胞毒性試験)とISO10993-6(生体への長期埋め込み試験)に基づいて実施。4週間の生体内埋め込み試験を実施したところ、従来の生体内埋め込み型電子デバイスに使われる金属電極と比べて炎症反応が極めて小さいことが確認できたという。

また、有機トランジスターの増幅回路は、厚み1μmのポリエチレンテレフタレート(PET)上に製造され、8×8の格子状に6mm間隔で並べられている。1つの回路で信号を200倍に増幅でき、周波数帯域100Hzでの増幅率が100倍、1000Hzでの増幅率が10倍を超える。

今回発表のシート型生体電位センサーは炎症反応が極めて小さいため、疾患で弱った臓器でも最小限の負荷で検査できる。そのため、医療用デバイスとしてのさまざまな応用が期待されている。

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