イーソルは2017年4月10日、マルチ・メニーコア環境のソフトウェア開発を支援する、モデルベース並列化ツール「eMBP」の提供を開始したと発表した。MathWorksのモデルデザインツール「Simulink」で設計されたモデルを利用して、マルチ・メニーコア向け並列コードを自動生成する。販売はイーソルの子会社であるイーソルトリニティが行う。
eMBPは、モデルベース開発(MBD)でのモデル設計ツールとして幅広く利用されているSimulinkで設計したモデルを入力することで、設計意図を反映した、より信頼性と実効効率の高い並列コードを自動生成できるツールだ。Simulinkモデルをブロック単位で並列化し、それに基づいてC言語ソースコードを並列化することで、C言語ソースコードの解析だけでは難しい制御アルゴリズムの並列化を、設計者の意図通りに実現しやすくする。
機能としては、Simulinkモデルからブロックを単位として並列性を抽出する「ブロック構造抽出」、実装するマルチ・メニーコアプロセッサーのアーキテクチャーや性能情報をもとに実行性能の見積もりを行う「性能見積」(性能見積もりには、XML形式のハードウェア構造記述仕様「SHIM」を利用)、並列実行可能なブロック群をグループ化し各コアへ割り当てる「コアマッピング」、並列化されたC言語ソースコードを自動生成する「並列コード生成」、コアごとにグルーピングされたブロックの関係をGUIで直感的に把握できる「可視化」を備えている。
機能モデルを作成しシミュレーションによって事前評価を行いながら進める開発手法であるMBDは、自動車のECUや航空・宇宙、通信・エレクトロニクスといった厳しい安全性が要求されるシステムの開発などで導入されている。一方、こうした分野でもインテリジェント化が進み、性能と電力効率に優れたマルチ・メニーコア技術の導入が必要となっている。eMBPの利用により、品質と開発効率を向上させるMBDのメリットを生かしながら、ソフトウェア並列化の問題を解決して、高信頼・高性能なマルチ・メニーコアシステムの効率的な開発が容易になる。
eMBPは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」の支援を受け、イーソルと名古屋大学の枝廣研究室によって研究開発された成果を実用化したものだ。現時点ではルネサスエレクトロニクスの車載マイコン「RH850」およびイーソルのリアルタイムOS「eMCOS」をサポートしており、今後さらにサポート環境を拡充していくという。