DCモーターとは?その特徴や仕組み、他のモーターとの違いについて解説!

DCモーターとは?

電気を供給して回転運動をするのがモーターです。電気エネルギーを機械エネルギーに変える装置だと言うこともできます。モーターには多様な種類が存在しますが、その中で広く普及しているものとして、DCモーターがあります。

DCモーターとは、直流電流で動作するモーターを指します。DCはDirect Current(ダイレクトカレント)の略で、電池などの直流電源を接続して、直流電流を流すだけで回転するモーターのことです。電池などで動作させることが可能なため、機器の構造を簡略化したり、小型化するのに役立ちます。

さらにDCモーターは、ブラシ(電極)の有無によって、ブラシ付きDCモーターとブラシレスDCモーターに大別することができますが、ブラシ付きDCモーターを単にDCモーターと呼ぶこともあります。

DCモーターの特徴と仕組み

DCモーターの特徴としては、電圧に対して回転が直線的に変化する(回転数を印加電圧により自由にコントロールできる)こと、電流に対して出力トルクが直線的であること、停止状態から動作する時に最大の回転をすることなどが挙げられます。

ブラシを使ったDCモーターの基本的な構造は、N極とS極の磁石を取り付けたステーター(固定子)と、巻線を施したローター(回転子)を組み合わせたものです。ローターの巻線(コイル)の両端には整流子、電流を供給する側にはブラシが接続されます。整流子とブラシが接触して電流が流れることで、モーターとして動く仕組みとなっています。

磁石はN極とS極が向かい合うように配置され、N極とS極の間にローターが設置されます。直流電圧を印加した整流子がブラシに接触している間は、整流子と巻線を経由して電流が流れる状態となり、フレミングの左手の法則に基づいてローターが回転します。

ローターが90度近く回転すると、整流子とブラシが接触しない構造になっているため、電磁力は発生しなくなりますが、惰性でそのまま回転を続けます。回転を続けていると、再び整流子とブラシが接触するようになり、電流が流れ、電磁力が発生する状態となります。ただし、半回転して整流子とブラシが接触すると、前回とは電流の向きが反対となる構造なので、それまでの回転方向を維持することができます。この動作を繰り返すことで、DCモーターは同一方向に連続して回転を続けることが可能となります。

一方、ブラシレスDCモーターは、永久磁石を回転子としており、整流子とブラシが必要ありません。回転子の磁極位置を検出して電流を流すコイルを切り替えることで回転子が回転します。そのため、ブラシレスモーターは駆動回路(ドライバー)が必要です。また、軸の回転位置の検出にはホールセンサーなどの磁気センサーが使われます(センサーを使わないセンサーレスという方式もあります)。整流子とブラシの接触がないため、長寿命、高速回転が可能、追従性/応答性が良いなどが特徴となっています。

DCモーターと他のモーターとの違い

DCモーター以外のモーターには、交流電源を使って回転するACモーターや、パルス信号を受けて1ステップずつ回転するステッピングモーターなどがあります。

DCモーターとこれらのモーターは、効率、起動トルク、回転数、制御方法などが異なります。

直流電圧を印加するだけで動くDCモーターと比較すると、交流電源で動かすACモーターや、パルス信号を制御しなくてはならないステッピングモーターは、装置の構成が複雑になります。そのため、装置全体が大きくなりコストも高くなる傾向にあります。その点、DCモーターは携帯型の電気機器にも搭載できるように、サイズやコスト面で有利となる効率的な構成が可能です。

DCモーターの起動トルクは大きく、特にACモーターと比較すると、その性能が際立ちます。民生品などでも、機器の立ち上がりの速さをアピールするために、DCモーターが使用されていることを売りにしていることもあります。

回転数については、ACモーターが3600r/min、ステッピングモーターが2000r/min程度が上限であることが多いのですが、DCモーターはそれ以上の高回転で動作することが可能です。

制御方法については、DCモーターが主にクローズドループであるのに対して、ACモーターとステッピングモーターは主にオープンループとなっています。

このように、直流電流でモーターを回転するということ以外にも、DCモーターとその他のモーターには大きな違いがあるのです。

DCモーターのメリットとデメリット

DCモーターのメリットは?

DCモーターのメリットとして、直流電源を利用するため装置全体の構造が単純で済むというものがあります。交流のように極性が切り替わる場合は、対応するために装置が複雑になってしまいますが、直流は電流が一方向にしか流れず、電圧も比較的安定しているので、制御するのが容易です。その結果、装置を簡略化して低コストで製品を作ることが可能になります。

さらに、交流電流よりも直流電流の方が制御が容易なため、DCモーターの回転特性が安定し、反応も良くなるというメリットもあります。反応の良さを最も実感できるのは、モーターが動き出す瞬間です。DCモーターを使った製品は、起動させると毎回直ぐに動き始めて、使用する人にストレスを感じさせることがありません。DCモーター搭載の扇風機などを使ってみると、その性能の良さを如実に体感することができるでしょう。

DCモーターは直流電流で動くため、電池などの持ち運びのできる電源を利用できるのもメリットの1つです。コンセントから交流電流を供給するモーターの場合は、使える場所が制限されますし、交流電源に対応する回路を追加するために装置が大きくなって、持ち運ぶのに一苦労します。電池などの小型軽量の電源を使うためには、DCモーターの利用を検討するしかありません。

DCモーターのデメリットは?

ブラシのあるDCモーターは、ブラシが原因となるデメリットが幾つかあります。

まず、ブラシと整流子が消耗するために、製品寿命が短くなってしまいます。ブラシなどを交換すれば継続して使うこともできますが、メンテナンスを必要とするため、手間も費用も掛かってしまいます。このことを考慮して製品寿命が来た時には、メンテナンスをするのか、新しいものを購入するのかを決めなくてはなりません。DCモーターを使っている製品は比較的安価なものも多いので、どちらがコスト的に有利になるかを検討する余地もあるでしょう。

さらに、ブラシから騒音が発生する可能性もあります。機械的な接触のある箇所なので、ある程度の音が出るのはやむを得ませんが、使用し続けている間にブラシなどの磨耗により、大きな騒音となる場合もあります。気になるような大きな音が出るようになったら、メンテナンスや交換をしなくてはなりません。

他にも、ブラシが原因となって電気ノイズや粉塵が発生することもあります。このような問題は、DCモーターを搭載している機器だけではなく、周囲にも影響が及ぶため、事前に十分仕様を確認しておく必要があります。

DCモーターの主な用途

DCモーターは、多種多様な分野の製品に使用されています。小型化やコストダウンに役立つため、民生品としては、扇風機、電動歯ブラシ、エアコン、冷蔵庫など数多くの電気機器に搭載されるようになりました。電池でも動作可能なことから、携帯タイプの電気機器でモーターが必要とされる場合は、DCモーターが使用されることがほとんどです。携帯タイプの電気機器にとっては、なくてはならない存在となっています。

産業用の機器でも、ATM端末機器、計測器、自動車、医療機器など多彩な分野で、それぞれの用途に応じたスペックのDCモーターが採用されています。既成品のDCモーターだけではなく、各用途に応じて専用のものが開発製造されて、製品に搭載されることも珍しくありません。

まとめ

以上のようにDCモーターは、簡単な構成ながら、性能の優れたモーターです。性能や使用方法などを良く理解して使えば、日常生活や仕事の役に立ちます。さらに、現在問題となっているエネルギー問題の解決方法の1つとして、省エネ実現にも不可欠な技術ですから、積極的に使用することを検討しましょう。今後も、優れた性能のDCモーターが発売されて、身の回りだけではなく、地球環境の改善にも貢献するでしょう。

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