米ヒューストン大、レーザー光を液体の流れに変換するプロセスを発見

レーザーパルスにより生じるLaser Streaming

ヒューストン大学の研究チームが、レーザービームの運動量を変換し、純水中でジェット水流を作り出す手法を開発した。レーザー光を照射した容器中の水に定常流を発生させられることを実証したもので、研究成果は論文ウェブサイト『arXiv』に8月19日に公開されている。

通常レーザー光は、気泡など水中にある「インターフェース」に影響を与えることはできるが、水自体はそのまま透過してしまうことが知られている。今回、Jiming Bao氏の研究チームが開発した新プロセスでは、金(Au)のナノ粒子を含むコロイド水溶液を入れたガラス容器の壁に、緑色レーザーのパルスを照射したところ、レーザービームの光子によって直接引き起こされるかのように、屈折ビームと同じ方向にジェット水流が生じた。同チームはこれを「流れは、液体におけるレーザービームのように見えた」とし、これを「Laser Streaming(レーザーストリーミング)」と呼んでいる。

研究チームによれば、金のナノ粒子がレーザー光のパルスにより加熱・冷却され、それに伴って膨張・収縮を繰り返すことで超音波が発生し、これが液体に「音響流」という前向きの圧力をかける。さらに数分から数10分間ナノ粒子を加熱冷却することで、ナノ粒子とガラス壁のレーザー入射点近傍に結合被膜が生じ、この被覆がナノ共振器、すなわち一種の拡声器の役割を果たすことで、Laser Streamingが生じることを発見した。いったん結合被膜が生成した後は、コロイド水溶液を純水で置換しても、Laser Streamingは継続した。

この技術は、マイクロリアクターといったマイクロ流体デバイスに活用できる。MEMSなどの微細加工技術を利用して、微小な流路や反応容器、バイオセンサなどを組み込んだデバイスは反応効率が高く、省スペースで安全性が高いなどの利点が注目されている。このようなデバイスにとって、液体をミクロスケールで動かすことができることは大きなメリットだ。

研究チームは、「Laser Streamingは、マイクロ流体工学、レーザー推進、レーザー手術や洗浄、物質輸送や混合など、光学的に制御・起動できるデバイスに応用できる」と、その発見の応用を展望している。

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Engineers Turn a Laser Beam into a Stream of Liquid

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