アルキル化セルロースで高純度の半導体型カーボンナノチューブを分離抽出 産総研ら

産業技術総合研究所(産総研)は2024年7月10日、京都工芸繊維大学、奈良先端科学技術大学院大学と共同で、アルキル化セルロースを抽出剤として使用し、純度98%程度の半導体型カーボンナノチューブ(CNT)を選択的に分離抽出できることを実証したと発表した。

半導体型CNTは、高性能なトランジスタ材料や、発電材料のための高機能性インクとして用いられることが期待されている。しかし、単層CNTは半導体型と金属型の混合物として生成されるため、半導体型CNTだけを高純度かつ効率的に分離する技術が必要とされていた。

今回、アルキル基の種類や置換度、分子量などの分子構造が分離効率に与える影響を調べた結果、中程度に置換されたヘキシルセルロース(HC)が半導体型CNTの選択的抽出に適することが明らかになった。

エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基をそれぞれ置換したセルロースを用いた分散液の紫外可視近赤外吸収スペクトルを測定した結果、アルキル化セルロースの側鎖長によって半導体型CNTの分離選択性が変化することがわかった。

ヘキシルセルロースを使用した場合、金属型CNTによる吸収(M11)がほとんど観測されず、抽出した半導体型CNTからもプラズモン共鳴の吸収がほとんど観測されていない。半導体型CNTの高い選択性は、共鳴ラマンスペクトルでも確認された。

(a)異なる側鎖長のアルキル化セルロースを用いた分散液の紫外可視近赤外吸収スペクトル(ポリマー濃度0.25w/v%の乾燥テトラヒドロフラン溶液、光路長2mm)
(b)ヘキシルセルロース(HC)と分散ポリマーF127を用いて分散したCNT膜の赤外吸収スペクトル
(c)HCとF127を用いて分散したCNT複合膜のラマンスペクトル(励起波長660nm)。F127による分散では半導体型、金属型の選択性が見られない

また、成膜したCNTの熱電特性を調べた結果、ヘキシルセルロースで抽出した半導体型CNT膜は、分離精製していないCNTの3~4倍の熱起電力を示した。このCNT膜は未精製CNT膜の約10倍、従来の導電性高分子抽出法による半導体型CNT膜の約3倍の電力因子も示している。

HC(0.10%)、エチルセルロース(EC、0.05%)、従来抽出剤(PFO-BPy)、F127で抽出したCNT膜の熱電特性
(a)電気伝導度とゼーベック係数の関係、(b)電気伝導度と電力因子の関係

なお、抽出剤は入手が容易で安価な原料で調製できるため、高品質な半導体型CNTの安定供給につながる可能性があるという。

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産総研:半導体型カーボンナノチューブ(CNT)を選択的に抽出

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