新発想のマグネシウム電池を開発、リチウムイオン電池の約2倍の容量密度

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マグネシウム電池(イメージ)

マグネシウム電池の問題解決で貯蔵容量の増大へ

米ヒューストン大学電子・コンピュータ工学科のYan Yao准教授による論文が2017年8月24日に「Nature Communications」で掲載された。陰極(カソード)構造デザインを新しくすることで、マグネシウム電池の貯蔵容量を飛躍的に増加させた研究成果について記している。

陰極にマグネシウムを用いた電池がマグネシウム電池だ。マグネシウムはイオン化傾向が大きく、電子を失い陽イオンになりやすいため、陰極の材料として採用されている。地球上に豊富に存在し、枯渇の心配がないことから、次世代電池として期待されている。正極に空気中の酸素を使用する空気マグネシウム電池が最も有名だ。

また、マグネシウム電池は、電解質/電解液に何を用いるかに応じて、さまざまな種類に分けられる。電解液として海水を用いる海水電池、電解質として溶融塩を使う溶融塩マグネシウム電池、電解質としてイオン伝導性セラミックを使用する固体電解質マグネシウム電池などが知られている。

リチウムイオン電池と比べて引火性や爆発の危険性が低いので、マグネシウム電池は安全な蓄電池として開発が進められている。しかしマグネシウム電池には、イオンを収納する入れ物となるホスト材料内でマグネシウムイオンの拡散が遅い、ホスト材料にマグネシウムイオンを挿入することが難しい、塩化マグネシウムの化学結合を切断することが非常に困難といった問題がある。

マグネシウム電池の電解質に新材料を採用

Yao准教授らが「全く新しい概念だ」と語る今回の研究のポイントは、新たに一塩化マグネシウムを電解質として利用したこと、そしてホスト材料へのイオン挿入方法を改良した点にある。

まずYao准教授らは、マグネシウムイオンをホスト材料に挿入するのではなく、一塩化マグネシウムイオンを二硫化チタンのホスト材料に挿入しようと試みた。塩素-マグネシウム結合を保持できることから陰極での電荷貯蓄量は2倍になり、陰極での拡散もマグネシウムイオンよりも格段に速くなったという。

もう1つのポイントとして、Yao准教授らはナノ構造を持たせた陰極を開発した。一塩化マグネシウムイオンはサイズが大きいため、従来の方法ではホスト材料にイオンを挿入することができない。そこで、有機材料のピラー(陽イオン錯体や溶剤)を使い、ホスト材料として利用する二硫化チタンの層ギャップを3倍(0.57nmから1.8nmへ)に拡げたナノ構造を作り出し、一塩化マグネシウムイオンの挿入に成功した。

この新しいマグネシウム電池は常温で400mAh/gの容量密度を持ち、従来のマグネシウム電池の約4倍に相当する。なお、商用リチウムイオン電池の容量密度は200mAh/gほどだ。

電圧はリチウムイオン電池が3~4Vなのに対して、このマグネシウム電池は1V程度と低い。Yao准教授は「今回の研究手法は一般化が可能で、さまざまな多原子分子イオンを高電圧のホスト材料に挿入できる。そして将来、より高エネルギー密度の電池を電気自動車向けに低価格で作ることができるようになるだろう」と語っている。

電極開発も進むマグネシウム電池、実用化のめどは?

今回の研究はマグネシウム電池に新たな電解質を導入するものだったが、マグネシウム電池の研究においては新たな電極の開発も盛んに進められている。

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このようにマグネシウム電池の研究は積極的に進められているが、実用化には時間がかかる模様。富士経済の調査結果によると、マグネシウム電池が実用化するのは2030年以降になるという。

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