- 2017-9-15
- 技術ニュース, 機械系
- NMRP, シリンダーボアコーティング, ヘラー, ミラーボアコーティング, 日産自動車, 鉄系溶射皮膜
日産自動車は2017年9月14日、自動車エンジンの生産工程で用いる同社の独自技術「ニッサン・マシニング・ラフニング・プロセス(NMRP)」のライセンスをドイツの工作機械メーカーであるGebr. Heller Maschinenfabrik GmbH(ヘラー)に供与したと発表した。各自動車メーカーは、NMRPを利用したヘラー製のマシンを導入することで、エネルギー効率の高い「鉄系溶射皮膜」を採用したエンジンを安定した品質で量産できるようになるという。
現代のエンジンは、軽量化などを目的にシリンダーブロックにアルミを採用するケースが増えている。シリンダーブロックに設けられた筒状のスペース(シリンダーボア)中でピストンが上下運動をするが、アルミでは摩擦や熱に耐えられないため、通常はシリンダーボアの内側に厚さ2.6mm程度の鋳鉄製ライナーを挿入し保護している。しかし近年では、エンジンの軽量化や燃費向上のため、溶かした低炭素鋼を吹き付けて約0.2mmの薄膜を生成する鉄系溶射皮膜の採用が始まっている。ピストンが動く際の抵抗を低減させるため、加工後にシリンダーボアの内面を鏡面仕上げにすることから「ミラーボアコーティング」とも呼ばれる。
しかし、この鉄系溶射皮膜は安定した品質での量産が難しく、これまで一部の高性能エンジンにしか採用されてこなかった。そこで日産はボーリング加工の一種として、工具と加工条件を最適化し、溶射皮膜が強固に密着するようシリンダーボアの内面を粗面化するNMRPを開発した。このNMRPと溶射技術を組み合わせることで、鉄系溶射皮膜を持つエンジンを安定的かつ安価に量産できるようになった。すでに日産では、「NISSAN GT-R」のVR38DETエンジンのほか「ジューク 16GT」のMR16DDTエンジン、「Infiniti Q50、Q60」のVR30DDTTエンジンなど、ミニバンやコンパクトカーなどの新世代低燃費エンジンにも鉄系溶射被膜の採用を拡大している。
ライセンスの供与先である独ヘラーは、すでにシリンダーボアコーティング用の工作機械を製造販売しており、今後は鉄系溶射皮膜を持つエンジンの量産に必要な一連の製造技術を各自動車メーカーに提供できるようになるという。