東大と筑波大、次世代半導体材料の新しい分子システムの開発に成功

東京大学と筑波大学は2017年11月16日、次世代電子材料として期待されている有機半導体材料の新しい分子システムの開発に成功したと発表した。有機化合物からなる有機半導体の電荷移動度の向上に貢献し、曲がるディスプレイや、印刷法による安価かつ低環境負荷の電子タグなどの開発を加速し、超スマート社会を実現する技術となることが期待されるという。

スマートフォン、タブレット、ノートパソコンなどに用いられている半導体は、シリコンを中心とした無機化合物からなる無機半導体である。無機半導体は共有結合からなる固体のため固く、デバイス作製に約300~1000℃という高温を要する。一方で、有機半導体は弱い分子間力によって分子集合体を形成しているため、機械的に柔軟で、印刷による簡便な方法で作製できるメリットがある。しかし、弱い力で集合しているため、固体中であっても室温のエネルギーで分子が運動(分子間振動)して電荷の伝導が阻害される。その結果、半導体性能の指標である電荷移動度が低いことが問題となっており、その向上のためには新しいコンセプトに基づく分子システムの開発が必要不可欠だった。

同研究グループは、分子間振動を抑制するとともに、振動が起きても伝導へ悪影響が出にくい分子システムを提案し、前例のない有機半導体分子群の開発に成功した。得られた分子群は大気中でも長期間分解することなく、また実際に分子間振動が抑制されるとともに振動の電荷伝導への影響も抑えられるという。さらに、印刷により得られた単結晶を用いたトランジスタで、現在用いられているアモルファスシリコンの電荷移動度よりも1桁以上高い、有機半導体として世界最高レベルの10cm2/Vsを達成したとしている。

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