京大ら、電子が凍るモット絶縁体を「溶かす」新しい方法を発見――電流を流すだけで電気的・磁気的性質が大きく変化

京都大学は2017年11月30日、同大学の米澤進吾理学研究科助教らによる研究グループが、ルテニウム酸化物のモット絶縁体に電流を流すことで、磁場をはねのける巨大反磁性が現れることを発見したと発表した。

電子技術の基本は、半導体や金属中の伝導電子をコントロールすることである。一方、電子を通さない絶縁体の中で、電子同士の反発で身動きが取れず、電子が「凍った」状態に例えられるのがモット絶縁体であり、将来的な電子技術の材料の一つとして期待されている。凍った電子を、その絶縁体の一部の元素の入れ替えや高圧環境に置くことで「溶かす」と、電子同士の結びつきの強い「強相関金属」となり、高温超伝導や超巨大磁気抵抗といった新しい性質が生まれることが知られている。

今回の研究では、典型的なモット絶縁体であるルテニウム酸化物(Ca2RuO4)の単結晶に電流を流し、電気抵抗と磁性を測定した。その結果、電流の増加に伴いモット絶縁体の凍った電子が溶け始める状態を作れるだけではなく、外からかけた磁場をはねのける非常に大きな反磁性が現れることを発見した。超伝導体以外ではこれまでで最大の反磁性を創り出すことに成功したとしている。

同研究グループは今後について「この新たな方法によって、今回発見のルテニウム酸化物以外のモット絶縁体からも、さらなる面白い性質を引き出せる可能性がある。また、電流が流れた『非平衡状態』という通常の熱平衡とは異なる状態を利用することで生まれた新現象は、新たな学術分野の開拓にもつながると期待できる」としている。

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