富士通研究所は2017年12月4日、低消費電力で広い領域を対象にできる無線通信技術であるLPWA(Low Power Wide Area)に対応した、電池交換不要の世界最小センサーデバイスを開発したと発表した。温度センサーで測定した温度に合わせて電波送信のタイミングを制御する技術を開発し、電力を効率よく利用して電波送信に必要となる蓄電素子を半減させたことで、小型化を実現している。
IoTのセンサーデバイスには、利便性やコストの面から、電池交換の手間が不要な太陽電池などの利用や小型化が期待されている。同社ではこれまで、太陽電池のみの電力でビーコンを動作させる電源制御技術を開発し、温度による太陽電池の発電電力のバラツキに対しては蓄電素子を大きくして対応してきたが、今回、回路規模を小型化しつつ、送信電力を確保する新たな電源制御技術を開発した。
その1つは、温度による電力変動を許容する電源制御技術で、温度センサーによって取得した温度データを元に、LPWA無線の電波送信のタイミングをリアルタイムに制御するもの。LPWA無線の動作下限電圧を下回らないように、温度によって異なる起動電圧が最大となるタイミングで電波送信を行い、温度による無線回路の消費電力と太陽電池の発電電力のバラツキを許容することができる。電源変動へ対応するための余分な蓄電素子が不要になるため、センサーデバイスを小型化できる。
もう1つが、温度センサーを確実に起動させる電源監視技術。電源電圧の変動を分析し、温度センサーの動作可能な電力が蓄電されているかどうかを簡単な回路で正確に判別する技術を開発し、温度に合わせた最低限の電力で温度センサーの不要な動作停止を防ぐ。
これらの新たな技術をLPWAの規格のひとつであるSigfoxに適用し、世界最小(82×24×6mm)というLPWA対応・電池交換不要のセンサーデバイスを実現した。10分に1回、7日間の温湿度データを照度4000ルクスの環境下で、約7km先の基地局にダイレクトに送信できることを実証。さらに富士通のIoTデータ活用基盤サービス「FUJITSU Cloud Service K5 IoT Platform」を経由してデータ可視化することも実証した。
これにより、電源確保や電源ケーブル増設が困難な場所でも、同センサーデバイスを配置するだけでセンシングデータをクラウド上から取得でき、IoTシステムの導入や運用管理などをメンテナンスフリーで実現できる。
今後同社では、センサーデバイスの実用化に向けた実証実験を進め、今回の技術を「FUJITSU Cloud Service K5 IoT Platform」や富士通フロンテックのセンサーソリューションの接続デバイスとして搭載し、2018年度の製品化を目指す。