- 2022-11-29
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理化学研究所(理研)は2022年11月28日、理研およびシンガポール南洋理工大学、シンガポール国立大学、東京大学の国際共同研究グループが、皮膚や神経に密着して生体情報を取得するためのセンサー用電極に応用可能な、厚さ約1.3μmの極薄伸縮性導体を開発したと発表した。
ウェアラブルデバイスや体内埋め込み型デバイスでは、装着者の日常の行動を妨げることなく、必要な生体情報を長期間取得することが求められる。これを実現させるためには、超薄型かつ伸縮性を持つセンサーが必要になる。そのようなセンサーの開発には、極薄で伸縮性のある導体が必要不可欠だ。
今回の研究では、厚さ約1.2μmのシリコーンゴムのポリジメチルシロキサン(PDMS)基板上に、導電層として約50nmの金を成膜した極薄の弾性導体を作製した。導体の総膜厚は約1.3μmで、最大300%の引っ張りひずみまで導電率を失うことなく伸ばすことができる。
優れた伸縮性を示す理由は、成膜した金がマイクロクラック構造を持つことにある。マイクロクラック構造は微小な亀裂を持つ構造だ。金を成膜する際の熱蒸着中にPDMS層が熱膨張して変形し、成膜された金にマイクロクラック構造が形成されることは知られていた。しかし、これにはPDMS層に一定以上の厚さが必要で、約1μmのPDMSではマイクロクラック構造は形成されなかった。今回約100μmの厚さのPDMSサポート層を、厚さ1μmのPDMSの下に挿入して金を蒸着させる手法を開発し、薄いPDMS上にでも金にマイクロクラック構造を形成することに成功した。
今回開発した極薄伸縮性導体の金電極表面を、薄い粘着性のイオン導電性ポリマー層でコートすることで、皮膚との接着性を改善。手洗いやランニング、水泳の後に8時間連続使用しても心電図信号を安定的に記録できることを確認した。
また、体内に埋め込み可能なニューラルインターフェース(ヒトと機械の間で情報をやり取りするためのツール)として、ラットの神経と良好なインターフェースを形成できることも確認できた。
今回開発した極薄伸縮性導体は、皮膚上で動作する生体信号取得センサーや、体内埋め込み型のニューラルインターフェースとして利用できるという。さらにソフトロボティクスやMEMS(微小な電子機械システム)などの領域でも有効なアプリケーションが発見できる可能性があるという。