- 2017-12-18
- 化学・素材系, 技術ニュース
- ポリエーテルチオ尿素, 東京大学, 自己修復ガラス
東京大学は2017年12月15日、割れても直る「自己修復ガラス」を開発したと発表した。
窓ガラスは割れると、加熱溶融しないかぎり、再利用ができない。一方、10年ほど前から、温和な条件下で何度でも繰り返し修復するゲルやゴムなどの柔らかい材料が報告されている。
柔らかい材料の自己修復は、破断面の間に高分子鎖が侵入し、互いに貫入し絡み合うことで起こる。しかし、ガラスなどの固い材料を構成する高分子鎖の運動は、「凍結」と表現されるほど緩慢であるため、加熱・溶融しない限り、そのような材料を修復できない。
研究グループは今回、ポリエーテルチオ尿素と呼ばれる高分子材料からなるガラスを開発。そのガラスが固く、さらさらした表面にもかかわらず、破断面を互いに押し付けているとそれらが融合することを発見した。
また、研究グループは、このガラスが弾性率1GPa超、力学強度32MPaと大きな値を示すことを考えると驚くべき性質であると説明。修復能についても、室温における数時間の圧着で、機械的強度が破損前と同等の値にまで回復することを確認している。
研究グループは、この成果から、ガラス状態にある固い高分子材料の自己修復が可能になるとし、持続可能な社会への貢献が期待されるとしている。