- 2017-12-21
- 機械系, 自動車, 転職・キャリアアップ
~ 自動車業界の技術トレンドを各分野から見る ~
本記事は、エンジニア専門の人材紹介会社メイテックネクストのキャリアコンサルタント・陣内 健志氏への取材記事です。自動車業界の技術トレンドについて、機械系・電気系・ソフトウェア系・化学系といった専門分野別に考え、エンジニア市場の変化、求められるマインド・専門性などのエンジニアのキャリア形成に役立つ情報を発信していきます。(執筆:中嶋嘉祐)
――前回、「EV(電気自動車)シフト」がエンジン開発に携わる機械系エンジニアのキャリアに与える影響について伺いました。
別の見方をしますと、ガソリン車と比べればEVは発展途上にある製品です。EVを洗練させていくために、機械系エンジニアが必要とされる場面もあるのでしょうか。
[メイテックネクスト 陣内健志氏]EVは駆動源がエンジンからモーターに置き換わるものの、駆動源の動力を効率的に伝える機構を考えるのは、引き続き、機械系エンジニアの仕事です。
また、モーターもエンジン同様に熱を出しますから、放熱についても機械系エンジニアが見ることになります。
EVになっても、車両の強度を保ちながら軽量化を進める動きは変わらないでしょう。軽量化と強度・放熱を両立させながら、車両の構造や機構を考えていく役割も変わらずに残ります。
そして、車両を安定させて安全に走らせる足回りも、機械系エンジニアが設計していくことになります。こうした仕事もなくならないわけです。
逆にガソリン車からEVになることで、モーターはエンジンよりも場所を取りませんから、設計の自由度が増すと言われています。これまでにない構造をどう考えていくか、機械系エンジニアの力が問われることになるでしょう。
そう考えてみると、機械系エンジニアの中でも、車両全体の構造や、動力を効率的に伝達させる仕組みが分かるエンジニアは、今後ますます必要とされるようになるのではないでしょうか。
自動運転が実現しても、機械系エンジニアへの影響はないように思われるが――
――自動車業界ではEVの他に、自動運転にも注目が集まっています。自動運転が実現すると、機械系エンジニアにも影響はあるのでしょうか?
[陣内氏]機械系エンジニアの市場に対して、自動運転は直接的に影響を与えてはいません。
ただ、自動運転の状況を分かりやすく搭乗者へ伝えるため、ヒューマンマシーンインターフェース(HMI)まわりを刷新しようという動きはあります。車載ディスプレイや操作用スイッチなど、機械系エンジニアの仕事は間接的に増えてくるかもしれません。
もっと言えば、自動運転対応の車両には、これまでよりもセンサーなどの電子部品を多数積み込むことになります。
限られたスペースの中で効率的に電子部品を配置するため、強度や放熱を考えながらインバーターなどの適切なサイズを機械系エンジニアが算出する。そして、そのサイズ内で電気系エンジニアに電子部品を設計してもらう。そういった形で機械系エンジニアが必要とされる場面は増えていくでしょう。
あとは自動運転が実現したら、「どれだけ車内が快適に過ごせる空間になっているか」が決め手となって、購入する車を選ぶ人が増えてくるのではないかと考えます。
車内で快適に過ごしてもらうには、少しでも空間を広げた方がいいでしょう。けれど車内空間を広げると、足回りで使えるスペースにしわ寄せが来ます。そうなっても、これまで以上に安定した走りで、搭乗者を気持ちよく目的地まで送り届けられるように設計する。そうしたところも、機械系エンジニアにとって、腕の見せどころとなるのかもしれません。
陣内 健志(メイテックネクスト 機械・メカトロ分野 コンサルタント)
約6年間、自動車部品メーカーにて生産技術職を担当し、主に国内及び海外向けの生産設備の立上に従事。ものづくりの大変さと面白さを学び、その経験を活かしてエンジニア目線でのキャリアサポートをしたいと考え、現職に至る。