高機能グラフェンナノデバイス開発に貢献――3層グラフェンにおける積層パターンの作り分けに成功

3層グラフェンの積層構造の模式図。(a) ABA積層構造、(b)ABC積層構造

東北大学は2018年2月9日、名古屋大学と共同で、グラフェンが3枚積層した3層グラフェンにおいて、2種類存在する積層パターンの作り分けに成功したと発表した。

グラフェンは炭素原子が蜂の巣状に結合したシートで、その中には質量ゼロの超高速電子(ディラック電子)が存在することから、グラフェンを用いた超高速電子デバイスや超高速コンピューターへの応用研究が、精力的に進められている。一方、グラフェンを2枚3枚と積層した場合、2層ではAB積層、3層積層の場合はABAとABC積層の2つの可能性がある。この2種類の3層グラフェンは、その性質が大きく異なることが理論的に予測されていたが、これまでの方法では、ABA構造3層グラフェンを作ることはできても、ABC構造を作製することは困難だった。このため、その電子的性質は未解明のままで、3層グラフェンを用いた先端機能デバイス開発の障害となっていた。

研究グループは今回、炭化硅素(SiC)半導体結晶を高温で加熱することで結晶上に自立グラフェンを作製。温度・圧力などの作製条件を制御することで、ABAまたはABC積層をもつ3層グラフェンを選択的に作り分けることに成功した。また、それらの電子状態を角度分解光電子分光法で調べた結果、ABA積層では、ディラック電子が存在し、ABC積層では、ディラック電子は存在せず、自由電子的な電子状態であることを発見。観測された電子状態は理論計算の予測とも合致し、3層グラフェンがその積層構造の違いにより、異なる電子状態を持つことを明らかにした。

研究グループは、今回の成果により、ディラック電子を自在に制御したグラフェンナノデバイスの開発が期待されるとしている。

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