コーヒーかすからホロセルロースナノファイバーの分離に成功 横浜国立大

横浜国立大学は2024年6月28日、コーヒーかすから52%の高収率で2-3nm繊維幅のホロセルロースナノファイバーを分離する技術を開発したと発表した。植物由来の環境にやさしい食品添加剤や化粧品などへの活用が期待できる。研究成果は、高分子多糖類の専門誌である『Carbohydrate Polymer Technologies and Applications』オンライン版に同月25日に掲載された。

食品廃棄物である使用済みコーヒーかすは、世界中で年間600万トン以上が排出されており、有効な活用方法が検討されているが、実用化に至った例は数例しかない。コーヒーかすには細胞壁の主要な成分であるヘミセルロース約40%、リグニン約30%、セルロース約10%が含まれており、セルロースをナノメートルスケールに細かくして、超極細の繊維であるセルロースナノファイバー(CNF)を分離する研究も進められている。CNFは植物由来の環境に優しい樹脂やプラスチックの補強材などへの活用が期待されているが、分離にはセルロース分子鎖間の強固な水素結合を切断する必要があることなどが課題だった。

同大学の研究グループでは、セルロースと同じ多糖類に分類されるが、構造の異なるヘミセルロースに着目した。オフィスやカフェで出たコーヒーかすを処理して、ヘミセルロースとセルロースのみからなるホロセルロースの状態にした後、高圧下物理的な衝撃によって水中で微細化した。その結果、52%という高収率でホロセルロースナノファイバー(HCNF)を分離することに成功した。

原子間力顕微鏡で観察すると、HCNFは平均2–3nmの繊維幅と平均0.7–1μm繊維長に分離されていた。一般的に機械的なナノ化処理で得られるCNFは、強固で不均一な水素結合が原因で数十nm幅程度までしか細かくできないと考えられていたが、コーヒーかすに含まれるヘミセルロースが水に膨潤しやすい性質をもっていたことから、2–3nmへの微細化が可能になったと考えられる。

また、X線回折法と固体核磁気共鳴分光法を用いて構造を解析した結果、HCNF上にはマンナンが結晶化した状態で含まれ、コーヒーかす由来のHCNFがこれまでに知られていなかった特徴を持つことも明らかになった。

さらに、このHCNFを凍結後に乾燥させると、発泡スチロールのような形状となった。これに再度水を加え、ハンドシェイクすると30–50nm幅まで再び分散することも確認できた。凍結乾燥させたHCNFには、ハンドリングが容易で、長期保存が可能なこと、輸送時の容量を飛躍的に少なくできるなどの特長がある。

研究グループでは、今回開発したHCNFの特長を生かし、食品用乳化安定剤として利用する研究を進めている。

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