UCSD、データマイニングを使い、短期間で白色LED用新蛍光体を発見

カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)は2018年2月19日、データマイニングとスーパーコンピューターによる演算を用い、白色LED用の新蛍光体を見つけ出す手法を発表した。この蛍光体を使用したLEDは、従来のものよりも発色に優れているという。この研究成果は『Joule 』に論文「Mining Unexplored Chemistries for Phosphors for High-Color-Quality White-Light-Emitting Diodes」として2018年2月19日に発表されている。

蛍光体は、白色LEDを製造するための重要な結晶性粉末だ。白色を作り出すためには例えば青色単色LEDと組み合わせ、LEDのエネルギーを吸収・励起し、その補色となる黄色光を放射する蛍光体を使う。近紫外LEDで励起させる場合は赤緑青のRGB蛍光体を使って混色し、白色光を生成する。しかし、市販の白色LEDに使用されている蛍光体は希土類元素を使用しているため、高価かつ製造が難しいという欠点がある。

UCSDナノ工学科のShyue Ping Ong教授の研究室は、スーパーコンピューターによるシステマチックかつスループットの高い手法を使い、既知の蛍光材料で使用されているストロンチウム、リチウム、アルミニウム、酸素という地球に豊富に存在する元素を組み合わせた新たな蛍光体を予測した。それはこれまで蛍光体として使われていないSr2LiAlO4(SLAO)という物質で、近紫外および青色領域の光を吸収し、LED蛍光体として優れた性質を備えていることが推測された。

そして、UCSD材料工学科のJoanna McKittrick教授らが、SLAOを作るために必要な製法を考え出し、SLAOが予測された通りの光吸収性と光放出特性を備えることを確認した。共同研究者の韓国全南大学校のWon Bin Im教授らは、工業生産向けに蛍光体のレシピを最適化し、白色LEDの試作に成功した。この鮮鋭に発光する試作LEDをCRI(Color Rendering Index)を使用して評価したところ、市販のLEDはCRI値が約80であるところ、試作LEDは90を超えたという。

従来、材料の選定や実験といった試行錯誤で数年を要した作業が、コンピューターとデータマイニングの手法により3カ月で済んだという。Ong教授は、「コンピュータを使用することで、何千もの材料を迅速にスクリーニングし、まだ発見されていない新しい材料の候補を予測することができた。そして計算に掛かるコストは高くない」と、その成果を語っている。

蛍光体の主な限界は、吸収光をいかに効率よく発光に変換できるかという量子効率にある。現在、量子効率の理想限界は約32%とされ、通常のLED動作温度ではその88%程度を達成しているという。Ong教授は「より鮮明な色を出すことには成功した。今後は量子効率をさらに高めるよう材料の最適化に取り組む」としている。

関連リンク

Supercomputers Aid Discovery of New, Inexpensive Material to Make LEDs with Excellent Color Quality

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