太陽光と光触媒によるCO2フリー水素製造法の鍵技術となるか――岡山大ら、カーボンナノチューブを有機色素で染めて使う新しい光触媒技術を開発

岡山大学は3月22日、同大学と山口大学の共同研究グループが、カーボンナノチューブの内部空間に色素分子を封じ込めることで、光照射下において色素増感水分解反応による水素製造が可能になることを世界で初めて確認したと発表した。

さらに、通常の光触媒では利用困難な赤色光(波長650nm)照射下で水分解水素生成反応の活性を比較したところ、染色したカーボンナノチューブ光触媒の量子収率(1.4%)は、色素分子を持たないカーボンナノチューブ光触媒の量子収率(0.011%)に比べて、活性が120倍になることも確認したという。これは、カーボンナノチューブを有機色素で染めることでカーボンナノチューブ光触媒の活性波長を制御できることを示しており、太陽光と光触媒を利用した水分解によるCO2フリー水素製造法の鍵技術となることで、国連の「SDGs(持続可能な開発目標)」達成への貢献も期待できるとしている。

太陽光と光触媒を利用した水分解による水素製造法は「人工光合成」ともいわれ、無限ともいえる太陽光のエネルギーと、水から水素エネルギーを安価に得られるため、持続可能な社会にとって欠かすことのできない技術と考えられている。しかし、現在までに実用化が検討されている光触媒は太陽光スペクトルのごく一部しか利用できないために、十分な活性が得られていないこと、また光触媒の一部に希少元素が利用されていることなどの問題点があった。

同研究グループは、炭素材料を光触媒として利用する水素製造法について研究を進め、カーボンナノチューブが水素発生光触媒として極めて高い活性を有することを発見してきた。同研究グループが開発したカーボンナノチューブ光触媒は、従来型の水分解光触媒が300~530nm程度の波長域の光にのみ活性を示す事とは異なり、300~1100nmの広い波長域で活性を示すため、水素発生光触媒のブレークスルー技術として期待されていた。

今回の成果により、有機色素を利用してさらに細かい活性波長のチューニングが可能となった。これにより、これまで利用効率が上がらなかった波長を活用した水素製造が可能になるため、太陽光エネルギー変換効率の大幅な向上につながる画期的な技術になりうるという。さらに太陽電池やセンサーなどへ応用することでデバイスの性能向上が期待できるほか、無機光触媒に比べて軽量な特性を活かした宇宙空間での利用など、産業界での活用にも期待ができるとしている。

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