中部大学は2018年3月27日、30年以上前に同大学の津田一郎教授が提案した数理モデルが、ブラジルの数学者らによって数学で証明されたと発表した。
津田教授の数理モデルは、人が脳で連想記憶を行う機構の一端を説明したもの。提案された1987年にコンピューターを用いた数値シミュレーションでも検証したが、演算の誤差が生じるため正しいと断言できなかった。このほど、数学的手法で検証され、モデルが正確であることが明らかになった。
人は体外から刺激を受けて脳に送られてきた信号を、過去の記憶から連想して新たな記憶状態に導く。生きるために危険な状態から身を守ったり、ある食物を「無害で栄養価がある」と判断して食べたりするのに役立っている。かじったリンゴを見て「リンゴだ」と連想し、レモンを見て「酸っぱい」と連想して新たな記憶としてとどめるのも、連想記憶によるものだ。
津田教授は大脳新皮質内の神経細胞(ニューロン)のネットワーク構造を模擬した神経回路モデルを使って、連想記憶の研究に着手。神経回路には記憶に達する途中の状態(疑似アトラクター)が一時的にとどまり、複数のニューロン間をカオス(無秩序)的な状態で行き来しながら最終的に秩序のある記憶になる数理モデルを提案した。
当時も、モデルを使った数値シミュレーションを実施。しかし、無限小数を有限にし、四捨五入することなどで誤差が生じてしまい、モデルが確実に正しいとは断言できずにいた。それが今回、誤差内に真の解があることを保証する数学的手法で、数理モデルが正しいことが証明された。