窒素固定プロセスにおける金属触媒作用を解明 MIT

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自然界の微生物による大気中窒素固定プロセスにおいて、N2分子がニトロゲナーゼ酵素と結びつくことにより、強固なN-N三重結合が顕著に弱められて活性化し、アンモニアに変換される触媒作用メカニズムが明らかにされた。 Image: Jose-Luis Olivares, MIT

MITの研究チームが、自然界の微生物による大気中窒素固定プロセスにおいて、窒素分子(N2)をアンモニアに変換するニトロゲナーゼ酵素の触媒作用メカニズムを解明することに成功した。N2分子がニトロゲナーゼ中に存在する鉄-硫黄原子のクラスターと結びついて生成する錯体を実験的に再現し、この錯体がN2分子の強固なN-N三重結合を著しく弱めることを明らかにした。生命にとって極めて重要であり、自然界の微生物による神秘な働きである窒素固定プロセスを実験的に実証したもので、生物無機化学分野における大きな進歩をもたらしたと言える。研究成果が、2021年5月27日の『Nature Chemistry』誌に公開されている。

窒素は、プロテインやDNA、その他の生体分子の重要な構成元素だ。N2ガスは地球上の大気の約80%を占めるが、生命体はN2がアンモニアに変換されなければ、窒素を吸収することができない。近代になってアンモニア合成の工業プロセスが発明されるまでは、地球上の全てのアンモニアは、N2分子内の強固なN-N三重結合を切断できる唯一の酵素であるニトロゲナーゼを用いて微生物により生成されていた。

生命体の細胞はこのアンモニアを用いて、もっと複雑な有用窒素含有化合物を生成している。「N2分子は、非常に強いN-N三重結合を有しており基本的に不活性だ。これまでニトロゲナーゼがどのようにN2分子をアンモニアに変換しているかは謎だった」と、研究チームは説明する。全てのニトロゲナーゼは、鉄-硫黄原子から構成されるクラスターを含み、場合によってはクラスター内にモリブデンも含む。N2分子はこれらのクラスターに結びつくことで、アンモニアへの変換を開始すると考えられているが、これまでN2分子と鉄-硫黄のクラスターの相互作用を解明することができず、そのメカニズムは未知のものだった。

そこで研究チームは、自然界で実際に生成するクラスターを単純化したモデルクラスターを考案した。強い触媒作用を持つ実際のニトロゲナーゼは、7個の鉄原子と9個の硫黄原子および1個のモリブデン原子、1個の炭素原子で構成されるが、モデルクラスターとして3個の鉄原子と4個の硫黄原子および1個のモリブデン原子から成り、炭素原子を含まないクラスターを作成した。

加えて、反応溶液中のクラスター同士が互いに相互作用を起こして、実験目的にとって望ましくない反応を生じないように、1個の鉄原子を除いた他の金属原子に配位子を付加することで、N2分子をクラスター内に取込み、フリーな1個の鉄原子と結びつけることに成功した。こうして得られた錯体の構造をX線結晶構造解析などの手法で解析した結果、鉄原子の電子密度の多くがN-N三重結合に移動し、結合が不安定になって活性化し、アンモニアへの変換反応が容易になることを見出した。

今回の解明により、鉄-硫黄のクラスター内の鉄など金属原子の役割が重要であることが明らかになり、生物無機化学分野における大きな進歩を達成したと、研究チームは考えている。

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How metals work together to weaken hardy nitrogen-nitrogen bonds

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