MIT、空気中から低濃度の二酸化炭素を除去できる新手法を開発

Image courtesy of the researchers

MITの化学工学 Ralph Landau教授のT. Alan Hatton氏らは、空気中から二酸化炭素を除去する新しい方法を開発した。およそ400ppmという低濃度にも対応できるもので、研究成果は2019年10月1日、『Energy and Environmental Science』誌に掲載されている。

これまで気体の二酸化炭素を除去する方法の多くは、火力発電所のガス送管排気のような高濃度でないと効果がなかった。また、熱エネルギー源や、分離と放出サイクルを完了するための圧力調整や化学物質の追加などが必要で、高価なプロセスとなるという課題があった。

今回開発された装置は、大型の特殊バッテリーといえるもので、充電中に電極を通過する空気(またはその他のガス流)から二酸化炭素を吸収し、放電時に二酸化炭素を放出するものだ。

バッテリーを充電する際、電極の表面では電気化学反応が起こる。電極はカーボンナノチューブと複合されたポリアントラキノンでコーティングされており、二酸化炭素に対して親和性がある。二酸化炭素が、大気中のように低濃度で存在する場合でも、気流または供給ガス中の分子と容易に反応する。バッテリーが放電されると逆反応が起きるが、その間デバイスはシステム全体に必要な電力の一部を提供でき、その過程で純粋な濃縮二酸化炭素を排出する。システム全体は、室温かつ通常の気圧で作動し、追加の化学物質を投入する必要もない。

研究チームによれば、既存の二酸化炭素除去技術では、二酸化炭素1トンを捕捉するため、二酸化炭素濃度に応じて1〜10ギガジュールを消費するのに対し、このシステムでは1トンあたり濃度に関係なく約1ギガジュールと、非常にエネルギー効率が高いという。そして、このシステムが少なくとも7000回の充放電サイクルに耐え、その間に効率低下は30%程度だということを確認した。チームは、これを2万〜5万サイクルまで容易に改善できるとみている。

さらに電極自体は、標準的な化学処理方法で生産でき、将来的には新聞印刷機と類似したロールツーロール生産プロセスでの大量生産が可能で、電極1平方メートルあたり数10ドルほどで生産できると推定されている。

研究チームは、この装置が気候変動要因である二酸化炭素の排出削減に、重要な道具となると考え、プロセスを商業化するためにVerdoxという会社を設立、今後数年以内に試験規模の工場を作ることを望んでいるという。

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