理化学研究所は2018年4月17日、東レとの共同研究グループが、柔軟性に富み、耐熱性と高いエネルギー変換効率を持つ超薄型有機太陽電池の開発に成功したと発表した。布地の接着等に一般的に用いられるホットメルト手法により衣服に直接貼り付けることができ、電源として利用できるという。
近年、ウェアラブルセンサーなどの電源として、柔軟性の高い太陽電池が期待を集めている。しかし、これまでの薄型太陽電池では、十分なエネルギー変換効率と耐熱性を両立することが難しく、高温下での駆動や、熱を伴う加工プロセスへの適応が妨げられていた。
今回開発された太陽電池は、基板から封止膜までの全てを合わせても厚さが3μmと極薄でありながら、最大エネルギー変換効率10%を達成している。さらに100℃の加熱でも素子劣化がほとんど無いという高い耐熱性を持ち、大気環境中で80日保管後の性能劣化も20%以下と、安定性も備えている。
開発にあたって、研究グループは、高エネルギー変換効率と高耐熱性を併せ持つ半導体ポリマー「PBDTTT-OFT」を新たに合成した。従来から有機太陽電池の材料として広く用いられてきた「PBDTTT-EFT(またはPTB7-Th)」と似た骨格を持つが、PBDTTT-OFTはこれに比べ直線状の側鎖を持つ。このため高い結晶性を持つ膜を形成でき、加熱による導電性が、従来のPBDTTT-EFTよりも小さくなる。
また、表面平坦性と耐熱性に優れる透明ポリイミドを基板材料に使用することで、従来の超薄型有機太陽電池よりも高いエネルギー変換効率と耐熱性を持たせた。さらに、封止膜を撥液性に優れたポリマーとガスバリア性に優れたポリマーの2層構造にすることで、大気安定性が改善した。
同太陽電池のエネルギー変換効率は約9.4%(最大10.0%)で、従来の7.9%に比べ約1.3倍向上した。また、100℃で5分間加熱した後、従来材料を用いた太陽電池はエネルギー変換効率が20%減少したが、同太陽電池は劣化がほぼみられなかった。ホットメルト法によって、布地への貼り付けにも成功。貼り付け後も特性の変化や劣化はみられなかった。
同技術は、ウェアラブルデバイスの他、車内などの高温・多湿環境下でも安定して駆動する軽量な電源などへの応用も期待されるという。