- 2018-5-15
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- STT-MRAM, スピントロニクス技術, 東京エレクトロン, 東北大学, 磁気ランダムアクセスメモリー
東北大学は2018年5月14日、東京エレクトロンと共同で、反応性イオンエッチングプロセスの開発によるスピントランスファートルク型磁気ランダムアクセスメモリーの高性能化と歩留まり率向上の両立に成功したと発表した。同大学によると世界初だという。
近年のシリコンベースの集積回路では、トランジスタの微細化に伴う揮発性半導体メモリーにおける待機電力の増大が、高性能化を阻害する要因となっている。この問題を解決する技術として、スピントロニクス技術が注目を集めている。同技術を用いた2つの層の磁石の向きの違いによる抵抗状態の差を利用した磁気ランダムアクセスメモリー(STT-MRAM)は、情報の不揮発性、高速動作、低電圧動作、高い書き換え耐性を持ち、これまでの揮発性半導体メモリーなどが持つ課題の多くを解決することから、世界中で積極的に研究開発されている。
STT-MRAMの開発では、これまでイオンミリング法や反応性イオンエッチングを用いる方法などが開発されてきたが、いずれも歩留まり低下や生産中の物質にダメージを与えてしまうなどの問題があった。
今回の開発では、同大学の持つ知見と東京エレクトロンの持つプロセス技術を融合させることによって、高歩留まりと低ダメージを両立させる反応性イオンエッチングによるプロセスを確立した。
今回の研究で得られたデバイスでは、従来技術による歩留まり率91%に対して97%まで向上した。また、情報読み出し速度に影響を与えるトンネル磁気抵抗比は1.4倍に、また情報保持時間の指標として用いられる熱安定性指数は1.4倍に向上した。さらに消費電力の指標として用いられるスイッチング効率も1.3倍に向上し、これにより消費電力が50%削減できるという。
今回の開発により、これまで難しいとされてきた大容量のSTT-MRAMへの道が切り拓かれ、STT-MRAMの応用範囲がさらに広がることが期待されるという。