熊本大学と東邦金属は2018年5月18日、福田金属箔粉工業と共同で、直径30μmの超極細マグネシウム合金ワイヤーの製造に成功したと発表した。これまでの技術では、50μmの細さが限界だったという。
しかも、超極細ワイヤーの降伏強さは788メガパスカル(MPa)を記録。市販されているマグネシウム合金AZ31の377MPa、従来の限界だった600MPa程度を大幅に上回る機械的強度を示した。マグネシウム合金ワイヤーとして、細さと強さの世界記録を大きく更新したと説明している。
マグネシウムは実用金属の中では最も軽い金属。生体内で使用したときの安全性が高く、最終的に体内で分解吸収される特性もあるため、体内埋込の医療機器用材料として有望視されている。ただし、体内埋込の医療機器にマグネシウムを利用するには、マグネシウム合金ワイヤーを直径30μmまで細くすることが求められていた。
熊本大学などは今回、急速凝固粉末冶金法で作製したナノ結晶材料を出発材料に用いた。さらに伸線加工技術を高度化することで、ワイヤーの直径を従来の5分の3、断面積を約3分の1にまで極細化できた。また、生体内留置では不適合とされているアルミニウムを含まないため、生体吸収材などの医療機器への展開も十分に可能性があるという。
直径30μmの超極細マグネシウム合金ワイヤーは、生体吸収性ステントなどの循環器用医療機器、生体吸収性の縫合糸や血管結合具等の外科・インプラント用医療機器、ワイヤーハーネスなどの電気配線材料の軽量化、燃料電池の電極材料などへの応用が期待できる。
今後は、共同研究を加速させて極細化や量産化の技術開発を進めるとともに、生体吸収性医療機器などの応用製品の開発を進めていく考え。不燃マグネシウム合金など、熊本大学が研究している他のマグネシウム合金への展開も図るとしている。