- 2018-5-25
- 技術ニュース, 電気・電子系
- クォーク, ダイオメガ, ダイバリオン, バリオン, レプトン, 京, 京都大学, 大阪大学, 時間依存型HAL QCD法, 理化学研究所, 統一縮約法
理化学研究所、京都大学、大阪大学らの共同研究グループは2018年5月24日、スーパーコンピューター「京」を用いて、新粒子「ダイオメガ(ΩΩ)」の存在を理論的に予言した。同研究成果は、素粒子のクォークがどのように組み合わさって物質ができているのかという、現代物理学の根源的問題の解明につながることが期待できるという。
我々の身の回りの物質は全て「クォーク」と電子やニュートリノなどの「レプトン」と呼ばれる素粒子からできている。陽子や中性子、オメガ(Ω)粒子など3個のクォークから構成される粒子は「バリオン」と総称されており、これまで多数発見されているが、二つのバリオン(クォーク6個)からなる粒子「ダイバリオン」は、1930年代に発見された重陽子(陽子1個と中性子1個の結合状態)以外には見つかっていない。
共同研究グループは「時間依存型HAL QCD法」という新手法や「統一縮約法」という独自の数値計算アルゴリズムを確立し、これらに基づき理研のスーパーコンピューター京や「HOKUSAI」などを用いて、現実世界でのバリオン間に働く力を約3年の歳月をかけて計算した。
今回のシミュレーション結果の一つとして、2個のΩ粒子を近づけていった場合に、0.3×10-13cm程度までは互いに引き合うが、それ以上近づくと強く反発し合うことが明らかになった。さらにこの引き合う力のおかげで、2個のΩ粒子が結合状態を作る可能性が示された。
この成果により、2個のΩ粒子からなる新粒子ダイオメガが現実世界に存在する可能性が明らかになった。今後は世界各地で行われる重イオン衝突実験により、重陽子の発見以来、約1世紀ぶりとなるダイバリオンの新発見が期待できるとしている。