バッテリー駆動時間を100倍に延長する磁気ダイオードを開発

アメリカのミズーリ大学宇宙物理学科のDeepak K. Singh Axel准教授が、電子部品に使われているバッテリー寿命を大幅に延長できる磁気ダイオードを開発したと発表した。電子回路に欠かせない半導体の順方向電力損失を大幅に低減できるデバイスで、バッテリー寿命の延長や発熱対策に大きな効果が期待できる。研究成果は『Advanced Electronic Materials and Advanced Science』に論文「Magnetic Diode Behavior at Room Temperature in 2D Honeycombs」として2018年3月18日に発表している。

研究チームは、シリコンやゲルマニウムを使った半導体ダイオードにおいて、電流スイッチング時に順方向の電圧損失による電力消費がバッテリー寿命に与えている問題の解決に取り組んだ。彼らは、半導体を磁気システムに置き換えることで、機能を強化しつつ消費電力を大幅に削減し、エネルギー効率の高いデバイスを作り出すことを考えた。新素材として、シリコン表面のハニカム構造の上にパーマロイ(軟質磁性合金)を積層、2次元ハニカム格子構造を持つナノ構造材料を開発した。

今回Singh准教授らがこの磁気デバイスの特性について調査したところ、電子デバイスに利用される半導体ダイオードのように一方向にのみ電流を流すこと、さらに従来の半導体ダイオードよりも大幅に消費電力が少ないことを確認した。実証実験では、約6nmの厚さのハニカム格子構造を持つ磁気デバイスは、常温(300K )において10~15uAの一方向電流を流し、磁場を印加しない順方向電流を流すのに必要な電力はわずか30nWと、従来の半導体ダイオードより3桁も小さい値を示したことだ。

今回開発された磁気ダイオードは、順方向でも非常に少ない消費電力を示し、バッテリーなどの電源の効率を向上させ、駆動時間を100倍以上に延ばすことができるという。また、ラップトップやデスクトップPCのCPUから発生する熱の減少も期待できる。

Singh准教授は「最終製品を開発するためにはさらに多くの追試や開発が必要だが、このデバイスを使えば、5時間の充電が500時間以上の充電と同様の結果を期待できる。防犯カメラや無線周波数用アッテネータなどにおいてもデバイスが消費する電力を削減できる。この磁気デバイスの米国特許を申請しており、今後スタートアップを立ち上げて市場への普及に力を入れる。」と、今後の計画を明らかにしている。

関連リンク

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る