EVを進化させる新たな高導電性複合材料を開発――カーボンナノチューブで銅線の電流容量を増大

オークリッジ国立研究所(ORNL)の研究チームが、銅線の電流容量を増大する、カーボンナノチューブ(CNT:Carbon Nano Tube)と銅マトリックスから構成される複合材料を開発した。同等の電気抵抗で、より大きな電流を流すことができるので、電動モーターのエネルギー効率を高め小型化することが可能になるととともに、送電線における電力損失を低減すると期待される。研究成果が、2020年6月18日に米国化学会の『Applied Nano Materials』誌に公開されている。

地球環境の観点から広範な分野において、エネルギーの有効活用や省エネルギー、またクリーンエネルギーの拡大が重要な課題になっている。自動車業界では、EVの採用拡大を目指して、電動モーターやパワーエレクトロニクス、EV用インバータや充電システムなどに用いられる各種部品の性能向上に関する研究開発が活発に進められている。また、送電線における電力損失は、ORNLが歴史的に取り組んできた超伝導線の活用も含め、古くて新しい課題として広く検討されている。

研究チームは、銅線の導電性と機械的特性向上を目的として、画期的な特性を有するCNTの活用にチャレンジした。軽量で顕著な強度と優れた導電性を持つCNTを銅ベース材料に複合的に導入するというアイデアは決して新しいものではなく、従来から検討されてきた。但し、これまでの複合材料化への試みは、μmからmmという非常に短いものに限られ、より長いサイズでの検討では、性能的に劣るのが現状であった。

今回研究チームは、ナノファイバー膜や不織布の量産技術として知られる、エレクトロスピニング電界紡糸法に着目した。CNTを含有するポリビニルピロリドン(PVP)溶液を、高電界によって引き出すことによりナノファイバー化し、平坦な銅テープ上に堆積させるとともに一方向に整列させた。その後、真空加熱により高分子PVP成分を除去し、また真空コーティング技術であるマグネトロンスパッタリングにより、CNT被覆された銅テープの上に銅の薄膜層をコーティングした。このようにして、加熱拡散処理により均一緻密で方向性を持ったCu-CNT-Cuネットワークを形成させることに成功した。これまでよりも大きい10cm×4cmのCu-CNT-Cu複合材料が作製されたが、純銅材料と比較して、電流容量が14%高く、機械的性質が最大20%高いことが明らかになった。

この複合材料は、既存の量産技術で製造できるので、広範な電力システムおよび産業用途において、エネルギー効率向上や電力損失、電動モーターなど各種電気機器の小型化に寄与する先進的な高導電線を提供できると、研究チームは期待する。現在、他のコーティング技術も含め、ロール方式による長尺化の検討も進めている。

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