- 2018-7-5
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- JAXA, 宇宙航空研究開発機構, 静粛超音速機統合設計技術の研究開発
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2018年7月2日、「静粛超音速機統合設計技術の研究開発」中間評価を発表した。
同研究開発は、超音速機が民間機として成立するためのキーとなる低ソニックブーム/低離着陸騒音/低抵抗/軽量化の4つの技術目標を同時に満たす機体設計技術の獲得を目指すものだ。課題への取り組み方法の1つとして、民間超音速機実現に必要な国際基準策定への貢献に向けた取り組みを行う。さらに、小型超音速旅客機国際共同開発での競争力強化に向け、4つの技術目標を満たす機体を提示し、欧米に対する優位性獲得のための技術実証計画を策定するシステム設計を検討する。そして、技術目標を達成するための要素技術研究の高度化と、それらを統合した設計技術の開発を行う。
技術目標の具体的数値としては、乗客50人、巡航速度マッハ1.6、巡航距離3500nmの小型超音速旅客機において、85PLdB以下の低ソニックブーム、ICAO Chapter14適合の低離着陸騒音、巡航揚抗比8.0以上の低抵抗、構造重量15%減の軽量化を目指している。
ソニックブームの低減に関しては、JAXAのD-SEND(低ソニックブーム設計概念実証)プロジェクトで実証したコンセプトを、エンジンを搭載した実機の設計に適用可能とする統合設計技術を開発した。小型超音速旅客機概念設計に適用し、技術目標達成の見通しが得られているという。
抵抗低減技術については、低抵抗/低ブーム/低速空力性能向上を目的関数とする最適設計手法を構築し、主翼平面形設計に適用した。JAXAのNEXST(小型超音速実験機)プロジェクトで飛行実証した自然層流翼設計技術を高度化し、実機相当の高レイノルズ数で自然層流翼を実現する主翼表面圧力分布設定手法を考案。NASAとの共同研究で解析的に設計効果を示した。トリム条件における低ブーム特性との両立が課題だという。
離着陸騒音低減技術については、JAXAが特許を持つ可変低騒音ノズルの効果を屋外騒音計測試験で実証。また、低速空力性能向上のため、高揚力装置最適設計技術の研究開発を進め、解析によりクルーガーフラップによる性能向上を示すなどで、技術目標達成の見通しが得られているという。
さらに軽量化に関しては、主翼に複合材料を適用する最適構造設計技術として、複合材の配向角や板厚の自由度を増した設計ツールを構築。これも技術目標達成の見通しが得られているという。