京都大学は2018年7月24日、微小なコロイド粒子やゼリーのように柔らかいゲル状の多孔性材料の開発に成功したと発表した。
多孔性材料の例としては活性炭などがあり、空気から必要な気体を回収するガス分離材料や、浄水器のフィルターといった用途で活用されている。
多孔性材料の中でも、金属イオンと有機分子で構成される多孔性金属錯体(PCP/MOF)は、ジャングルジムのような構造の隙間に“ナノ空間”ができる。ナノ空間のサイズ・形・化学的性質を合成化学によって設計することで、さまざまな分子の閉じ込め・分離・反応をさせられるため、基礎的学問から工業的応用まで幅広い分野で活用できると期待されている。
ただし、PCP/MOFは結晶性を備えていることから、材料としては硬く、自在に加工することが難しいという課題があった。
そこで研究チームは、多孔性材料を合成する新しい手法としてナノ空間重合法を開発。PCP/MOFのようにジャングルジムに似た3次元構造をつくるのではなく、「ナノ空間」の最小構成単位である分子を切り出し、自由につなげていこうと考えた。金属イオンと有機分子から構成されて内部にナノ空間をもつ多面体分子(金属錯体多面体、MOP)をまず合成し、MOPを別の有機分子で重合することで、多孔性高分子材料をつくり出した。
測定の結果、こうして作成された多孔性高分子材料には結晶性はなく、数十nmの微小なコロイド粒子が生成されていることを確認。コロイド粒子を数十nmから数百nmの範囲で制御することも可能となった。
一方、反応の条件を変えると、透明なゲルが作成された。数十nmのコロイド粒子がお互いにくっついたコロイドネットワークを形成しており、その大きな空隙に溶媒分子が閉じ込められることでゲル化していることを突き止めた。ゲルのような柔らかい材料(ソフトマテリアル)が合成可能であることも初めて示した。
さらに、この研究から生まれたソフトマテリアルが、多孔性材料として機能することを示そうと試みた。超臨界二酸化炭素と呼ばれる液体を用いて、ソフトマテリアルから溶媒分子を取り除き、エアロゲルを合成。このエアロゲルに対してガス分子吸着実験を行ったところ、PCP/MOFのようにガス分子を吸着することが示された。
このソフトマテリアルは今後、ガス分離膜、分離用微細管、センサーデバイスなどへの応用が期待される。コロイド粒子は蛍光分子や薬剤などを閉じ込めることが可能なため、新しい薬剤運搬材料として利用することも期待できるとしている。