日立金属は2018年10月2日、高周波特性に優れたソフトフェライトコア材料「ML27D」を開発し、2018年10月から量産を開始すると発表した。ML27Dの使用により、ネットワーク機器や自動車、スマートフォン搭載部品の更なる小型・省エネ化が期待できる。
IoTの促進やビッグデータの活用といった情報処理の高機能化によって、サーバーなどのネットワーク機器が大容量化・高速化へとシフトするとともに、省エネへの関心も高まっている。特にネットワークサービスの中核であるデータセンターでは、管理費用の中核を占める空調費を抑えて施設全体のエネルギー効率を高めるために、ネットワーク機器の小型化や低排熱化が望まれている。
小型・高効率化のために、ネットワーク機器に用いられる電源は、スイッチング周波数の高周波化とパワー半導体スイッチング素子やトランス、インダクターなどの構成部品の低損失化が求められている。しかし、電源のスイッチング周波数を100kHz程度から数百kHz以上まで高めると、トランスやインダクターの主要部材であるコア材料の磁心損失(コアを特定の周波数の磁界の中に置いた時に失われるエネルギー損失)も高まり、電力変換効率の低下と発熱量の上昇が起こりやすい。熱の発生を抑えて周辺部品の動作を安定させるために、高い周波数帯においても磁心損失が低いコア材料の必要性が高まっている。
日立金属が開発したMn-Zn系フェライト材料ML27Dは、300~500kHz近傍の周波数領域で優れた低損失特性を示す。同社独自の粉末配合技術と加工・熱処理技術により、周波数500kHz、磁束密度100mT、温度100度の条件下での磁心損失は、同社従来品「ML33D」が1100kW/m3であるのに対し、ML2Dは720kW/m3と、30%超改善した。
また、低温から高温環境下にわたって低損失であることから、様々な使用環境のもとで電源回路の消費電力と発熱量を抑えることが可能だ。ML2Dの使用で、トランスやインダクター部品の更なる高効率化や高信頼性化、小型軽量化が期待できる。
日立金属の高周波低損失材料のラインナップである「ML95S」(500kHz~2MHz帯)、「ML91S」(1~5MHz帯)に300~500kHz帯のML2Dが加わることで、窒化ガリウム(GaN)や炭化ケイ素(SiC)を用いた高速スイッチング適応の次世代パワー半導体用の素子においても、より幅広い用途に対応できる。ML2Dの生産拠点は日立フェライト電子、日立金属(香港)番禺工場で、2018年10月から量産を開始する。