汚染された水を飲料水へ――液体金属ガリウムを利用して、重金属を除去する安価なフィルターを作製

汚染水を数分で安全な飲料水に変える、安価な新しい手法が考案された。

ニューサウスウェールズ大学(UNSW)とロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)の研究チームが、重金属に汚染された水を安全な飲料水に変えるフィルターを作製する、画期的で安価な方法を考案した。液体金属ガリウムを反応媒体として、アルミニウムを薄い酸化物層に変換し、汚染水を高速で濾過できるナノフィルターを作製したものである。研究成果は、2018年9月21日の『Advanced Functional Materials』誌に公開されている。

金属ガリウムは約30℃の融点において液体に変化するが、液体ガリウムは表面張力が小さく濡れ性が強いので、他の金属の結晶粒界を容易に侵食して脆化させることが知られている。研究チームはこれまでに、毒性のない液体ガリウム合金を使って、その表面に原子レベルの薄さの酸化物層をフロートさせることに成功していたが、今回室温で液体ガリウム中にアルミニウムを挿入し、液体表面を水または水蒸気と接触させることにより、ガリウム表面にアルミニウム酸化物のナノシート層を急速に生成することに成功した。

そしてこのアルミニウム酸化物ナノシートが極めて多孔質であることを発見し、フィルターとして使うと、水中に混入した重金属イオンやオイルを速やかに濾過できることを確認した。鉛などの重金属イオンは、アルミニウム酸化物と極めて親和性が高いので、アルミニウム酸化物ナノシートに確実に捕捉されるという。

UNSWの化学工学科のKourosh Kalantar-zadeh教授は、「開発したフィルターを備えた携帯用装置を用い、フィルター上部からフラスコに水を注ぐと、数分で汚染物質を濾過できる。濾過した水は清浄で、完全に飲用可能だ。繰返し使用したとしても、アルミニウム酸化物から重金属イオンが引き剥がされることがないので安全だ」と説明する。

また、「水から重金属を除去する携帯濾過装置はあるが、100ドル以上と高価だ。これまでアルミニウム酸化物を製造するには、エネルギーを大量に消費する1000℃以上の加熱プロセスが必要だった。この液体ガリウムを活用するプロセスでは35℃でも十分で、10セント程度で製作できる」という。

水の中の重金属イオン濃度が高く、清浄な水にアクセスできない人は、地球全体の人口の1割もいると推定されている。研究チームは、この製造プロセスは安価でエネルギー消費が小さいので、台所でも製作できると付け加える。「この技術は特許化せず公開しているので、世界中の人が自由に利用することができ、生活水準向上に寄与するだろう」と、Kalantar-zadeh教授は語っている。

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Liquid metal discovery to make toxic water safe and drinkable

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