- 2018-10-15
- 化学・素材系, 技術ニュース
- エラストマー, ポリロタキサン, ポリロタキサン架橋剤, メタクリレート, 名古屋大学, 東京大学, 滑車状ポリロタキサン
名古屋大学と東京大学は2018年10月13日、滑車状の分子を架橋剤に利用することで、力学的に丈夫で光学的に透明なエラストマーを調製することに成功したと発表した。
エラストマーは、柔軟に変形し、さらには元に戻るという柔軟性と弾性回復性を示す。そのため、自動車、航空機、建築物、スポーツ用品など、さまざまなものに利用されている。
一方、エラストマーの伸張性と弾性率の増大は、二律背反関係のため、その両方の性質を向上させる、つまり、靱性を向上させることは容易ではなかった。また、従来の方法では、カーボンブラックやシリカ微粒子などをエラストマー中に大量に混練する必要があり、その結果、光学的な透明性も損なわれてしまう問題があった。
そこで研究グループは、架橋剤としてポリロタキサンを使用すれば、得られたエラストマー内の架橋点は滑車のような動きをすることに着目。高分子鎖の動く範囲の増大により、靱性の向上が期待できると考えた。
そして実際に、メタクリレート系のモノマーと共にポリロタキサン架橋剤を重合してエラストマーを合成したところ、従来のメタクリレート系のモノマーからなるエラストマーに比べて、靱性が飛躍的に向上することを発見。さらに、少量のポリロタキサン架橋剤を利用するだけで、高靱性なエラストマーを光学的に透明な状態で調製できることが分かった。
今回、開発したエラストマーは、フレキシブルディスプレイ、ソフトロボットの開発など、透明な材料が必要な場合でも利用できる。そのため研究グループは、同エラストマーが、重要なキーマテリアルとしての役目を担うことができるとしている。